「届出が必要」と言われても、で、どうすれば?

前回、調剤ベースアップ評価料の解説記事を書きました。そこで「算定には施設基準の届出が必要」と書いたんですが、正直、これだけだと現場は困りますよね。

届出って、どうやるの? 様式(フォーマット)はどこにあるの? 厚労省のサイト? 厚生局? そもそも何を書けばいいの?

この評価料の届出は、実はいつもの施設基準の届出とは勝手が違うんです。同じ感覚でやろうとすると「あれ、様式がない」と戸惑います。

今日は、調剤ベースアップ評価料の届出について、実務目線で「どこで何を入手して、どう出すか」を整理します。


様式は「厚生局」ではなく「厚労省の特設ページ」にある

まず、ここが一番の落とし穴です。

通常、施設基準の届出様式は、各地方厚生局のホームページに掲載されています。だから、いつもの感覚で厚生局のサイトを探しに行く人が多い。でも、調剤ベースアップ評価料の様式は、厚生局のページには用意されていません

書類一式は、厚生労働省のホームページ内に設けられた「ベースアップ評価料特設ページ」に集約されています。ここにたどり着けずに時間を溶かす、というのがありがちなパターンです。

令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html

厚労省はこの特設ページで、届出手順を4ステップで解説しています。「一人でもできる!短時間でできる!!」というメッセージまで添えられていて、それだけ現場が戸惑いやすいポイントだと厚労省側も認識しているのがうかがえます。


届出の4ステップ

厚労省が示している手順を、薬局向けに整理するとこうなります。

先のURLの、「7.調剤ベースアップ評価料の届出について」を見ながら一緒に確認してみましょう。

ステップ①|様式(エクセル形式)をダウンロードする

厚労省の特設ページから、届出様式のエクセルファイルをダウンロードします。記入すべき箇所はオレンジ色になっているので、どこを埋めればいいか視覚的にわかるようになっています。

記入する様式は主に2種類です。届出書にあたる「別添2」と、届出書添付書類にあたる「様式103」です。

ステップ②|賃金改善の報告についての誓約を入力する

ベースアップ評価料は「賃上げに使うこと」が大前提の評価料です。そのため、賃金改善の状況を報告することを誓約する必要があります。

具体的には、今年度の8月に中間報告、次年度の8月に実績報告を必ず行う、という旨の誓約を入力します。「様式103」では、得た収入をすべて対象職員の賃上げに充当することなどを誓約する形になっています。

ステップ③|対象となる職員を確認する

ここが実務上、地味に重要なポイントです。

ベースアップ評価料の「対象職員」は、その薬局に直接勤務する職員を指します。ただし、以下の人は対象職員に含めません

  • 事業主、使用者、開設者、管理者(いわゆる管理薬剤師)
  • 40歳以上の薬剤師
  • 業務委託により勤務する者
  • 他の薬局や事業所を主たる勤務先とする者

「40歳以上の薬剤師は対象外」というのは、意外と知られていない点かもしれません。これは、40歳以上の薬剤師の処遇改善が別の枠組みで想定されているためですが、現場感覚だと「え、そうなの?」となりますよね。ちなみにぼくは、この評価料が新設される前に40歳を超えて薬剤師を離れたので、いずれにしても対象外でした笑。

ステップ④|メールで提出する

これも通常の届出と大きく違う点です。

調剤ベースアップ評価料の届出は、原則として電子メールでの提出が指定されています。窓口持参や郵送が基本の通常の施設基準届出とは、ここが異なります。

提出先は、薬局の所在地を管轄する地方厚生局の各都道府県事務所です。ただし、ベースアップ評価料の受付用に専用のメールアドレスが新たに割り当てられているので、通常の連絡先に送らないよう注意が必要です。厚労省が公開している「都道府県別メールアドレス一覧」のPDFで、該当するアドレスを確認してから送りましょう。

メール送信時は、作成したエクセルファイルを添付します。このとき、ファイル名に薬局のコードと届出の名称を入れるよう指定されています。なお、インターネット環境がないなど、やむを得ない事情がある場合に限り、紙媒体での提出も認められています。


届出したら終わり、ではない

忘れてはいけないのが、届出後の報告義務です。

ステップ②の誓約にもあった通り、ベースアップ評価料を届け出た薬局は、賃金改善の実績を報告する必要があります。届け出て算定を始めたら、あとは自動、というわけではありません。

「得た収入をちゃんと賃上げに使いましたよ」という実績報告書を、決められた時期に提出する。この報告まで含めて、ベースアップ評価料の一連の手続きです。届出のときに、この後のスケジュールもセットで押さえておくと安心です。

あなたの薬局では、届出後の報告スケジュールまで、担当者間で共有できていますか?


改定全体の届出を正確にやるために

令和8年度改定は、ベースアップ評価料以外にも届出が必要な項目が多くあります。地域支援・医薬品供給対応体制加算、電子的調剤情報連携体制整備加算など、施設基準の届出が絡む新設・変更項目が目白押しです。

一つひとつの届出を正確にやるには、改定内容と算定要件を体系的にまとめた資料が手元にあると心強いです。ぼくも制度を確認するときは、最新版の点数表や改定対応の実務書を参照するようにしています。ネットの断片情報だけで判断すると、要件の見落としが起きやすいからです。


調剤報酬点数表の解釈 令和8年6月版

【令和8年度版】薬局薬剤師必携!加算特化の調剤報酬攻略マニュアル: —もう迷わない!今日から使える算定のポイント徹底解説—

まとめ:ベースアップ評価料の届出は「いつもと違う」

調剤ベースアップ評価料の届出のポイントを整理します。

  1. 様式は厚生局ではなく、厚労省の「特設ページ」にある
  2. 手順は4ステップ:様式DL → 誓約入力 → 対象職員の確認 → メール提出
  3. 対象職員に管理薬剤師・40歳以上の薬剤師・業務委託者は含まれない
  4. 提出は原則メール。専用アドレスに、ファイル名を指定通りにして送る
  5. 届出後、賃金改善の実績報告まで含めて一連の手続き

通常の施設基準届出と勝手が違うので、「いつもの感覚」で進めると戸惑います。でも、手順さえ押さえれば、厚労省が言う通り「一人でもできる」内容です。

まずは厚労省の特設ページにアクセスして、様式をダウンロードするところから始めてみてください。


【前の記事】調剤ベースアップ評価料で薬剤師の給料は上がる?令和8年新設をわかりやすく解説


※本記事は令和8年(2026年)度改定の届出手続きに基づいて作成しています(記事作成時点の情報です)。様式の更新や手続きの変更がありうるため、実際の届出時は厚生労働省の特設ページおよび管轄の地方厚生局の最新情報を必ずご確認ください。