「これからは在宅ですよ」の落とし穴

薬局経営の話をしていると、必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。

「これからは在宅ですよ」

高齢化が進むから在宅需要は増える。だから薬局も在宅をやるべきだ。この論法、間違ってはいません。でも、あまりに単純化されすぎている、とぼくは感じています。

「増えるから、やる」だけで参入すると、思ったより需要がなかったり、体制が追いつかなかったりして、痛い目を見ることがある。コンサルタントとして医療機関を見ていると、そういう見込み違いは珍しくありません。

今日は、地域医療構想のガイドラインが在宅需要について実際にどう書いているかを読み解きながら、「本当に増えるのか」を薬局目線で検証します。


結論:増える。ただし「そのまま」ではない

まず結論から。ガイドラインは、在宅医療の需要が増加することを明確に認めています。

医療と介護の複合ニーズを抱える高齢者が増えるので、在宅医療の需要は増えていく。これは間違いない方向性です。

ただ、ガイドラインはここに重要な留保をつけています。ここを読み飛ばすと、判断を誤ります。

今後増加が見込まれる在宅医療の需要についても、そのすべてを在宅医療で受け止めるものではなく、広く慢性期医療の需要として、地域の実情に応じて、療養病床のほか、介護医療院、介護老人保健施設、特別養護老人ホームといった介護保険施設を含む地域の既存資源を組み合わせて対応していく

つまり、増える需要のすべてが「在宅医療」に流れるわけではない。その一部は介護保険施設が受け止める。「高齢者が増える=在宅の処方箋が同じだけ増える」ではないということです。


「在宅か施設か」は地域によって全然違う

ここが薬局にとって一番重要なポイントです。

ガイドラインは、慢性期の医療需要を「療養病床・在宅医療・介護保険施設」の組み合わせで受け止めると言っています。そして、この組み合わせの比率は地域によって大きく異なると明記しています。

特に印象的なのが、この記述です。

地方都市や人口の少ない地域においては、訪問診療のニーズを介護保険施設の入所が補完している場合が多く、介護保険施設の整備状況を把握し活用する必要性が高い

これはつまり、地方では「在宅」より「施設」で高齢者を支えているケースが多い、ということです。都市部と地方では、在宅需要の伸び方がまったく違う。

だから「これからは在宅」という全国一律の話は、あなたの地域には当てはまらないかもしれない。あなたの地域は、在宅で支える地域ですか?それとも施設が中心の地域ですか?


薬局にとってのヒント:施設との連携も「在宅」の一部

ここで発想を変えてみましょう。

「在宅か施設か」で対立させるのではなく、施設への関わりも薬局の在宅業務の一部と捉えるんです。

実際、ガイドラインは高齢者施設との連携を繰り返し強調しています。施設入所者が状態変化したときに適切な医療を受けられる体制、協力医療機関の確保、平時からの服薬情報の共有。ここに薬剤師・薬局が関わる余地は大きい。

ガイドラインには、高齢者施設に関わる職種として薬剤師も明記されており、日常的な服薬管理や看取りを含めた療養支援のあり方を、多職種が連携して整えることが求められています。

つまり、地方で「在宅の個人宅は少ないな」と感じる薬局でも、施設をターゲットにした在宅業務という道がある。ガイドラインは、むしろそちらを重視している地域があることを示しています。


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「量を増やす」より「効率的に」がキーワード

もう一つ、見落とせない方向性があります。

ガイドラインは、在宅医療について「単に訪問診療の提供量を増やすことのみを目指すのではない」と繰り返し述べています。医療従事者が減っていく中で、限られた人手で在宅を回すには、効率化が不可欠だからです。

具体的な手段として挙げられているのが、ICTの活用、オンラインでの情報共有、遠隔モニタリングなどです。

薬局が在宅に参入するなら、「たくさん訪問する」だけでなく「いかに効率的に、多職種と連携しながらやるか」という視点が問われる。人海戦術ではなく、仕組みで回す在宅。これが国の描く方向性です。


改革・改善のための戦略デザイン 薬局DX

薬局が在宅を判断するときの3つの問い

ここまでを踏まえて、在宅参入を考える薬局が自問すべき問いを3つにまとめます。

  1. 自分の地域は「在宅」で支える地域か、「施設」で支える地域か?——都市部と地方で戦略が変わる
  2. 個人宅だけでなく、施設との連携も視野に入れているか?——地方ほど施設が受け皿になっている
  3. 量ではなく、効率的・多職種連携型の在宅を描けているか?——人手に頼る在宅は続かない

この3つに答えを持ってから参入するかどうかで、結果は大きく変わると思います。


まとめ:「在宅は増える」を鵜呑みにしない

  1. 在宅需要は増える。ただし、そのすべてが在宅医療に流れるわけではない
  2. 増える需要は、在宅・療養病床・介護保険施設で分け合う
  3. 「在宅か施設か」の比率は地域差が大きい。地方は施設が受け皿になりがち
  4. 施設との連携も薬局の在宅業務。むしろ地方ではそちらが本命かもしれない
  5. 国が求めるのは「量」より「効率的・多職種連携型」の在宅

「これからは在宅」という言葉は、間違ってはいません。でも、そのまま鵜呑みにして参入すると、地域の実情とズレることがある。

大事なのは、全国的な通説ではなく、あなたの地域のデータを見ること。地域医療構想の議論では、まさにその地域ごとの在宅・施設の状況が話し合われています。

まず、自分の地域に高齢者施設がどれくらいあるか、調べてみてください。そこに、あなたの薬局の在宅戦略のヒントが隠れています。


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※本記事は厚生労働省「地域医療構想策定ガイドライン」および関連資料に基づき、記事作成時点の情報で作成しています。制度の詳細や最新の動向は、厚生労働省および各都道府県の公表資料をご確認ください。記事中の解釈にはぼく個人の見解が含まれます。