「地域医療構想って、結局なんなの?」

前回、「地域医療構想が薬局に与える影響」という記事を書きました。みなさん、もう読まれましたか?

その記事のあとで、こんな声をいただくことがありました。「そもそも地域医療構想って何なのか、よくわかっていない」と。

わかります。ぼくも薬剤師として現場にいたころは、まったく知りませんでした笑。言葉は聞いたことがあっても、中身を説明できる薬剤師は少ないと思います。

そこで今日は、コンサルタントとして医療機関に関わる立場から、地域医療構想とは何かを、薬剤師目線でやさしく整理します。細かい話は抜きにして、「最低限これだけは」というポイントに絞ります。


一言で言うと「医療の設計図を描き直す」こと

地域医療構想を一言で言うと、その地域に必要な医療体制を、将来を見据えて設計し直す取り組みです。

なぜ設計し直すのか。理由は人口構造の変化です。

これから2040年に向けて、高齢者は増え続け、医療を支える生産年齢人口は減っていきます。高齢者が増えると、手術のような急性期医療より、高齢者の救急や在宅医療の需要が増える。つまり、医療の「量」だけでなく「質」も変わっていくんです。

今の医療体制は、まだ「病気を治す急性期中心」の設計になっている部分が多い。それを、これからの時代に合った形に組み替えていく。それが地域医療構想です。

あなたの地域では、高齢者は増えていますか?それとも人口そのものが減っていますか?地域医療構想は、その違いに応じて中身が変わってきます。


昔からあった。でも2026年に大きく変わった

実は、地域医療構想という言葉自体は新しいものではありません。2014年の法改正で始まった仕組みで、もともとは2025年をめどに病床の機能分化を進めるものでした。

それが、2026年(令和8年)3月に「新たな地域医療構想」としてまとまり、大きく変わりました。

何が変わったか。対象が広がったんです。

これまでは主に「入院・病床」の話でした。新しい地域医療構想は、そこに外来医療、在宅医療、介護との連携、人材確保まで含めた、地域の医療提供体制全体の話になりました。

この「外来・在宅まで含む」という拡張が、薬局にとって重要です。入院だけの話なら薬局は蚊帳の外ですが、外来と在宅が入った瞬間、薬局は当事者になるからです。


キモは「5つの医療機関機能」

ここが地域医療構想の核心です。少しだけ専門的になりますが、ここだけ押さえれば大丈夫です。

新しい地域医療構想では、病院などの医療機関を、担う役割によって5つの機能に分類します。

医療機関機能ざっくり言うと
急性期拠点機能手術や救急など、医療資源を多く使う医療を集約して担う
高齢者救急・地域急性期機能高齢者の救急を中心に受け入れ、早期退院・リハビリにつなげる
在宅医療等連携機能在宅医療の実施や後方支援、24時間対応を担う
専門等機能集中的なリハビリ、中長期入院、有床診療所など
医育及び広域診療機能大学病院本院が担う、医師育成や広域的な診療

各病院が「うちは2040年にどの機能を担うか」を報告し、地域で協議して決めていきます。

薬局にとって注目すべきは、あなたの門前病院がどの機能になるかです。急性期拠点なら手術・救急系の処方が中心に、高齢者救急・地域急性期機能なら高齢者向けの処方が中心に、と、出てくる処方箋の性質が変わってきます。


病床の区分も変わった:「回復期」から「包括期」へ

もう一つ、地味だけど大事な変更があります。病床の機能区分です。

これまで病床は「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」の4区分でした。新しい地域医療構想では、このうち「回復期」が「包括期」に置き換わりました

包括期機能とは、高齢者の急性期患者に対して、治療と入院早期からのリハビリを行い、早期の在宅復帰を目指す機能です。増加する高齢者救急の受け皿として、急性期と回復期を併せ持つイメージです。

言葉が変わっただけと侮れません。国が「これからは高齢者の受け皿となる病床が重要だ」というメッセージを、区分の名前に込めているんです。


スケジュール:2028年度がひとつの山

地域医療構想は、今まさに動いています。大まかな流れはこうです。

  • 2026年度〜2027年度上半期:データ分析、課題の整理、区域の点検・見直し
  • 2028年度まで:各医療機関が2040年に担う機能を、具体的な病院名も含めて決定
  • 2029年度頃:地域医療構想を踏まえた第9次医療計画を策定
  • 2035年頃:一定の成果を確保

ポイントは2028年度です。ここで、各病院が2040年に何を担うかが決まります。あなたの門前病院の将来像が固まるタイミング、と言い換えてもいい。

逆に言えば、それまでは議論の最中です。今なら、地域の議論を見に行くことも、動き出すこともできます。


薬剤師として、最低限これだけ押さえよう

細かいことは抜きにして、薬剤師が押さえるべきポイントを絞ります。

  1. 地域医療構想は、2040年に向けて地域の医療体制を設計し直す取り組み
  2. 2026年に「新たな地域医療構想」となり、外来・在宅・介護まで対象が広がった
  3. 病院は5つの機能に分類され、2028年度までに各病院が担う機能が決まる
  4. 病床区分は「回復期」が「包括期」に変わり、高齢者の受け皿が重視されている
  5. 外来・在宅が対象に入ったことで、薬局も当事者になった

この5つを知っているだけで、業界紙のニュースや薬剤師会からの案内を読んだときの解像度が、まったく変わってきます。


もっと深く知りたい人へ

地域医療構想は、薬局経営や薬剤師のキャリアにも関わる大きなテーマです。制度の全体像を体系的に理解しておくと、これからの変化に振り回されずにすみます。

ぼくが制度を確認するときは、まず厚生労働省の一次情報(地域医療構想の特設ページなど)にあたるようにしています。ただ、一次情報は量が多く、背景や文脈まで一人で読み解くのは大変です。そこで、制度の全体像や背景を体系的にまとめた書籍を補助的に使うと、理解が一気に進みます。

一次情報で事実を確認し、二次情報である書籍で全体像を掴む。この組み合わせが、制度を正しく理解する近道だと、コンサルタントになってから実感しています。


病院 2026年 2月号 特集 2040年,日本の病院医療はどうなるのか? 新たな地域医療構想の目指すもの

医良戦略2040~2040年の医療を生き抜く13の戦略

まとめ:知っているかどうかで、差がつく

地域医療構想は、一見すると薬局から遠い、お役所の難しい話に見えます。でも中身を知ると、これが薬局の将来に直結していることがわかります。

難しく考える必要はありません。まずは「5つの機能」と「2028年度」という2つのキーワードだけ、頭に入れておいてください。それだけで十分なスタートです。

そして、自分の門前病院がどの機能を担いそうか、一度想像してみてください。そこから、あなたの薬局のこれからが見えてきます。


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※本記事は厚生労働省「地域医療構想策定ガイドライン」および関連資料に基づき、記事作成時点の情報で作成しています。制度の詳細や最新の動向は、厚生労働省および各都道府県の公表資料をご確認ください。記事中の解釈にはぼく個人の見解が含まれます。