エリアマネージャーになって最初にぶつかった壁【複数店舗の難しさ】


一店舗から、複数店舗へ
管理薬剤師として一つの店舗を見ていたぼくが、複数の店舗を見るエリアマネージャーになったとき、最初に思ったのは「これ、どうやって全部見るんだ?」でした。
管理薬剤師のときは、目の前に現場がありました。スタッフの様子も、在庫の状況も、患者さんの流れも、自分の目で見て、肌で感じることができた。何か違和感があれば、その場で気づける距離にいたんです。
でもエリアマネージャーは違います。担当するのは複数の店舗。当然、全部を同時に見ることはできない。一つの店舗にいるとき、他の店舗で何が起きているかは見えない。
この「見えない」という感覚が、最初の、そして最後まで続いた壁でした。今日はその話を正直に書きます。
最初は、全部の店舗を自分の目で見て回った
エリアマネージャーになってまずやったのは、とにかく全店舗を自分の足で回ることでした。
なぜか。現場の生の空気や課題は、自分の身体で感じないとわからないと思っていたからです。
報告書の数字を見るだけでは、その店舗が今どんな状態なのかが本当の意味では掴めない。スタッフの表情、調剤室の動き方、患者さんとのやりとりの温度感。そういうものは、現場に立って初めて身体知として入ってくる。
だから、ぼくは時間の許す限り店舗を回りました。一つひとつの店舗に足を運んで、自分の目で見て、肌で感じて、課題を拾っていく。管理薬剤師時代の感覚を、複数店舗に広げようとしたんです。
あなたなら、複数の現場を任されたとき、まず何から始めますか?
でも、限界が来た
当然ですが、この方法はすぐに限界が来ました。
体は一つしかありません。全店舗を自分の目で見て回ろうとすると、移動だけで時間が溶けていく。一つの店舗にじっくり向き合えば、他の店舗が手薄になる。全部を均等に見ようとすると、どこも中途半端になる。
そして何より、ぼく自身が疲弊していきました。物理的にも、精神的にも。「自分が見ていない時間に何か起きているんじゃないか」という不安が、常につきまとう。
管理薬剤師のときに通用していた「自分の目で見る」というやり方が、エリアマネージャーでは通用しない。役割が変わったのに、やり方を変えられていなかったんです。
「報告が上がってくる仕組み」を作ろうとした
限界を感じたぼくが次に考えたのは、「自分がいちいち動かなくても、現場から正しい報告が上がってくる仕組み」でした。
自分の目で全部見られないなら、現場の人に「正しく見て、正しく報告してもらう」しかない。そう考えて、報告のフォーマットを工夫したり、定期的に状況を共有してもらう場を設けたり、いろいろ試しました。
理屈としては正しいはずでした。マネジメントの教科書にも「権限委譲」「報告の仕組み化」と書いてある。ぼくがやろうとしたことは、方向性としては間違っていなかったと思います。
正直に言うと、最後までうまくいかなかった
ここは正直に書きます。
「報告が上がってくる仕組み」は、最後までうまく機能させられませんでした。
理由はいくつもあると思います。報告というのは、上げる側の主観が必ず入る。「問題ない」と報告されたことが、実は問題だらけだったということもある。逆に、現場が気づいていない課題は、そもそも報告に上がってこない。
そして、報告のフォーマットを精緻にすればするほど、現場の負担が増える。負担が増えると、報告は形だけになっていく。「正しい報告」を求めれば求めるほど、本当の現場の空気から遠ざかっていく、という皮肉な構造がありました。
結局、「自分の目で見る」と「報告に頼る」の間で、ずっと揺れ続けていた。これが正解だ、という着地点を、ぼくはエリアマネージャー時代に見つけられませんでした。
今、振り返って思うこと
うまくいかなかった経験ですが、今になって思うことがあります。
たぶん、「自分の目で見る」か「報告に頼る」かの二択で考えていたこと自体が、限界だったのかもしれない。本当は、その二つを組み合わせて、信頼できる店長を育てて、その人を通じて現場を感じる、という第三の道があったのだと思います。
当時のぼくは、まだ「人に任せる」ことが本当の意味ではできていなかった。自分が見ないと不安だった。その不安を手放せなかったことが、うまくいかなかった根っこにあった気がします。
医療経営コンサルタントになった今、複数の医療機関を同時に見る立場として、あのときの葛藤がそのまま役に立っています。「全部は見られない」という前提から、どう本質を掴むか。あの失敗があったから、今は少しだけうまくやれている気がします。
まとめ:役割が変われば、やり方も変えなければならない
エリアマネージャーになって最初にぶつかった壁を、正直に振り返りました。
- 複数店舗は「自分の目で全部見る」ことができない
- 最初は全店舗を足で回ったが、物理的・精神的に限界が来た
- 「報告が上がる仕組み」を作ろうとしたが、最後までうまくいかなかった
- 本当は「人に任せて、その人を通じて見る」第三の道が必要だった
管理薬剤師として優秀だったやり方が、エリアマネージャーではそのまま通用しない。役割が変われば、やり方を根本から変えなければならない。頭ではわかっていても、これがなかなかできないんです。
もし今、あなたが「現場を離れて、複数を見る立場」になったばかりなら、ぼくと同じ壁にぶつかるかもしれません。そのときは、「自分の目で見る」ことに固執しすぎていないか、一度問い直してみてください。
← 【前シリーズ】管理薬剤師になって最初に困ったこと【ドラッグストア編・体験談】
※本記事はぼく個人の体験に基づく見解です。組織体制や業態によって最適なマネジメントは異なります。参考程度にお読みください。
