管理薬剤師が最初に整備すべき法令対応:要指導薬・第一類の販売体制と監査対応


「立入検査が入ります」の一言で、固まってしまった
管理薬剤師になってしばらく経ったころ、上司から連絡が来ました。
「来月、保健所の立入検査があるから。」
正直、その場でちょっと固まってしまいました 笑。
「管理薬剤師として法令の責任者になった」という自覚はあった。でも、実際に検査が来ると聞いて初めて、「自分の店、本当に大丈夫か?」という不安が一気に押し寄せてきた。
急いで店内を見回してみると、あちこちに「これ、ちゃんとできているのか?」という箇所が目に入ってきた。特に気になったのが、要指導医薬品と第一類医薬品の陳列・販売体制でした。
それまで「なんとなくやっていた」部分が、一気に「ちゃんとやらなければならないこと」として見えてきた。あの経験が、法令対応を本気で整備するきっかけになりました。
要指導医薬品・第一類の販売体制、何が問題だったのか
ドラッグストアで最も法令上の要件が厳しいエリアの一つが、要指導医薬品と第一類医薬品の取り扱いです。
ぼくが整備に苦労したのは、主に3つの点でした。
①陳列場所と鍵の管理
薬機法上、要指導医薬品と第一類医薬品の陳列要件は以下のように定められています。
- 要指導医薬品・第一類医薬品:陳列設備から1.2m以内の範囲に購入者が立ち入れないよう措置(チェーンやパーテーションの設置など)を取ること。ただし鍵のかかった陳列設備に収める場合はこの限りではない。
- 要指導医薬品:一般用医薬品と混在しないよう区別して陳列すること
- 第一類医薬品:第二類・第三類と混在しない陳列区画を設けること
陳列設備から1.2m以内への立ち入りを制限する措置(鍵をかける、もしくは鍵がない場合はチェーンやパーテーションで区画する)が求められます。ただし実務では、繁忙時に鍵の管理がなあなあになったり、陳列区画の境界が曖昧になったりすることが起きやすい。
「これくらいなら大丈夫だろう」という感覚が、法令的にはアウトになるケースがある。検査を前に、まず陳列区画と施錠の運用を一から見直しました。スタッフ全員に「なぜこうするのか」の理由を説明して、運用を統一した。これが思いのほか時間がかかりました。
なお、2025年5月に公布された改正薬機法により、2026年5月1日から医薬品の販売制度が変わっています。要指導医薬品は、薬剤師によるオンライン服薬指導(テレビ電話等での双方向の情報提供)を経れば販売できるようになりました。一方で、緊急避妊薬(レボノルゲストレル製剤)は「特定要指導医薬品」として指定され、引き続き薬剤師による対面販売が必須です。要指導医薬品の中でも、オンライン対応できるものと対面が必須なものに分かれることになるので、自薬局の取扱品目がどちらに該当するか、確認しておく必要があります。
②情報提供・相談応需の記録
薬機法上の情報提供義務は、区分によって異なります。
- 要指導医薬品:薬剤師による対面での書面を用いた情報提供が義務。販売前に年齢・他の薬の使用状況・症状などを確認した上で、必要事項を記載した文書(添付文書の写し等)を交付すること。原則として本人のみへの販売で、常備目的の販売は禁止、原則1人1包装単位まで。
- 第一類医薬品:薬剤師による書面を用いた情報提供が義務。ただし購入者から継続使用のため説明不要の申し出があり、薬剤師が適正使用が可能と認めた場合は省略できる。
- 第二類医薬品:情報提供は努力義務(義務ではない)。ただし相談応需は義務。
「やっていた」と思っていたことが、記録として残っていないケースがありました。口頭でちゃんと説明していても、記録がなければ「やっていない」と見なされることがある。これが法令対応の怖いところです。
特に第一類では、販売記録(日時・品名・数量・情報提供の有無など)を残す運用が不可欠です。レジシステムや販売記録台帳と連動した記録フローを整備することで、「抜け」が起きにくくなります。
あなたの薬局では、情報提供の記録がきちんと残るフローになっていますか?
③スタッフへの周知と徹底
法令対応で最も難しかったのが、実はここでした。
ぼく一人が理解して動いても、スタッフ全員が同じ動きをしなければ意味がない。特にドラッグストアでは、登録販売者やパートスタッフが多く、「誰が何を販売できるか」の境界が曖昧になりやすい。法令上の主なルールは以下の通りです。
- 要指導医薬品・第一類医薬品:薬剤師のみ販売可。登録販売者・一般スタッフは販売不可。
- 薬剤師不在時:要指導医薬品・第一類医薬品の販売は不可。販売停止の掲示と区画の管理が必要。
- 第二類・第三類医薬品:登録販売者が販売可。ただし研修中の登録販売者は管理者または管理代行者の指導下での販売が必要。
「要指導は薬剤師しか販売できない」「第一類は薬剤師不在時には販売できない」……当たり前のことですが、忙しい現場では「ちょっとくらいいいか」という空気が生まれやすい。
これを防ぐには、ルールを「守れる仕組み」として現場に組み込むしかありません。口頭で言うだけでなく、フローチャートにして見えるところに貼る、レジ周りの導線を変える、薬剤師不在時は要指導・第一類のエリアに「販売停止中」の表示を出す習慣をつける……。地味ですが、こういう環境整備が法令対応の核心でした。
実際に立入検査を受けてみてわかったこと
準備を重ねて迎えた立入検査は、正直「思ったより淡々と進んだ」という印象でした笑。
検査官が確認するのは、書類・陳列・販売記録・施設の状況です。事前に整備していた部分は問題なく通過しました。一方で、「ここはもう少し整理してください」という指摘もいくつかありました。
指摘された内容は、いずれも「わかってはいたけれど後回しにしていた」ものでした。検査というのは怖いものではなく、「後回しにしていたことを強制的に整備するきっかけ」だと、終わってみて思いました。
それ以来、「検査があるから整備する」ではなく「いつ検査が来てもいい状態を維持する」という意識に変わりました。管理薬剤師として、これが一番大事な気づきだったかもしれません。
管理薬剤師が最初に整備すべきチェックリスト
ぼくの経験をもとに、管理薬剤師になったら早めに確認しておきたい項目をまとめます。赴任直後や、しばらく整備できていないと感じている方は、一度チェックしてみてください。
- 要指導医薬品の陳列区画・施錠の運用が徹底されているか
- 第一類医薬品の情報提供記録が残るフローになっているか
- 薬剤師不在時の販売制限がスタッフ全員に周知されているか
- 毒薬・劇薬の管理記録(受払簿)が最新の状態で保管されているか
- 業務手順書(SOP)が現状の業務実態と合っているか
- 管理薬剤師の勤務記録・不在時の対応体制が明確になっているか
全部一度にやろうとすると止まります。まず一つだけ確認してみる、それだけで十分です。
まとめ:法令対応は「守るため」ではなく「患者さんを守るため」
法令対応というと、「検査をクリアするため」「罰則を避けるため」というイメージがあります。でも本質は違うと、今は思っています。
要指導医薬品・第一類の販売体制を整備することは、患者さんが適切な情報提供を受けた上で薬を購入できる環境を守ることです。記録を残すことは、何かあったときに「薬剤師として適切な対応をしていた」という事実を示すことでもある。
管理薬剤師は、法令上の責任者です。その重さを、ぼくは立入検査を経験して初めて腑に落としました。重さを知ることは、怖いことじゃない。むしろ、ちゃんと仕事をするための土台だと今は思っています。
まず今日、自分の店の要指導医薬品の陳列区画を一度確認してみてください。
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※本記事はぼく個人の体験に基づく見解です。法令の詳細は改正状況により変わる場合があります。最新の法令・通知を必ずご確認ください。
