「おめでとう、来月から管理薬剤師ね」

ある日、上司からそう言われました。

嬉しかったです。素直に。でも同時に「あ、詰んだかも」とも思いました笑。

当時自分は30代前半。管理薬剤師になるまでのぼくは、調剤も服薬指導も、薬剤師としての仕事はそれなりにこなせていたと思っています。でも「管理」という仕事は、薬剤師の仕事とまったく別物でした。

最初に困ったことは何か?

正直に言います。全部です。まんべんなく困りました。

人のこと、数字のこと、法令のこと、後輩の育て方……何一つ「準備できていた」ものはなかった。今になって笑えますが、当時は笑えなかったんです 涙。

この記事は、これから管理薬剤師になる方、なったばかりで今まさに困っている方に向けて書きます。「ぼくも最初はそうだったよ」という話として、読んでもらえたら嬉しいです。


困り①|スタッフとの関係が、一夜にして変わった

これが最初の、そして最大の壁でした。

昨日まで同僚だった人たちが、今日から「部下」になる。この変化は、言葉にすると単純ですが、実際に経験するとかなりしんどいんです。

特に困ったのが、自分より年上のスタッフへの対応でした。年齢は上、でも役職はぼくが上。この構図、どう振る舞えばいいのか、最初はまったくわからなかった。

「指示を出すと角が立つかもしれない」「注意したら関係が壊れるかもしれない」。そういう余計な気遣いが邪魔をして、言うべきことが言えない時期がありました。

結果、どうなったか。スタッフも迷うんです。「この人、管理薬剤師なのに何も言わないけど、どうすればいいんだろう」と。リーダーが曖昧な態度でいると、現場全体が曖昧になる。それを痛感したのが、管理薬剤師になって最初の数ヶ月でした。

あなたは今、言いたいことを言えていますか?


困り②|数字を「見る」仕事が、突然始まった

薬剤師として働いていたころ、売上とか在庫金額とか、正直あまり意識していませんでした。

管理薬剤師になったとたん、毎週・毎月の数字を報告する立場になりました。処方箋枚数、調剤売上、OTC売上、在庫回転率……。「これ、何を見ればいいの?」という状態からのスタートです。

特に困ったのが、数字が悪かったときの「説明責任」でした。上司に「先月より枚数が落ちてるけど、なんで?」と聞かれたとき、「わかりません」とは言えない。でも本当にわからない笑。

そこから少しずつ、「数字の背景にある現場の動きを読む」という習慣が身についていきました。枚数が落ちたのは近隣に競合が出たからなのか、スタッフの対応に何か問題があったのか、それとも季節要因なのか。

今になって思えば、この「数字を現場と結びつけて考える力」は、後にコンサルタントとして働く上でも完全に活きています。40歳を超えてから未経験でコンサルに転職できたのも、あのころ数字と格闘していた経験が土台にあったからだと思っています。


困り③|法令・行政対応の「責任者」になった重さ

管理薬剤師は、薬事法(現・医薬品医療機器等法)上の責任者です。

「わかってはいたけれど、実感がなかった」というのが正直なところです。なったとたん、急に実感が来た。

ドラッグストアの場合、調剤だけでなくOTCの管理、要指導医薬品の陳列・販売、毒薬・劇薬の管理と記録……。法令上やるべきことの量と種類が、想像以上に多かったんです。

「これ、ちゃんとできていなかったら監査で指摘されるやつだ」と気づいたとき、背筋が伸びました。いや、正確には縮んだ笑。

そこから、業務手順書を一から確認して、できていない部分を一つずつ整備していきました。面倒くさかったけれど、これをやっておくことが「管理薬剤師として店舗を守ること」だと、少しずつ腑に落ちていきました。


困り④|後輩の育て方が、まったくわからなかった

「自分がやった方が早い」という誘惑との戦いでした。

管理薬剤師になりたてのころ、後輩に仕事を任せるのが苦手でした。任せても気になって口を出してしまう。結果、後輩は「やっても口出しされる」と感じて、自分で考えなくなる。

悪循環でした。

転機になったのは、あるベテランスタッフに言われた一言です。「山本さん、もうちょっと待ってみたら?」。

その一言で気づきました。ぼくは「教える」ことに気を取られすぎて、相手が「考える」時間を奪っていたんです。

それ以来、少し待つようにしました。すぐ答えを言わず、「どう思う?」と聞くようにした。時間はかかるし、もどかしいときもある。でも後輩が自分で考えて動くようになると、現場全体がちょっとずつ変わっていきました。

後輩の育て方について、もう少し詳しくはこちらの記事にも書いています。


それでも「管理薬剤師をやってよかった」と思う理由

散々「困った」を並べましたが笑、管理薬剤師の経験は今のぼくの土台になっています。

人を動かすこと、数字を読むこと、法令を守りながら現場を回すこと、後輩を育てること。これ全部、コンサルタントになってからも毎日使っているスキルです。

115社に応募して、114社に落ちながら、40歳を超えて未経験でコンサルタントに転職できたのは、管理薬剤師として「経営に近い仕事」を積んでいたからだとぼくは思っています。エージェント全員に「難しい」と言われながらも諦めなかったのは、あの経験があったからこそ自分の力を信じられた、というのもあるかもしれない。

座右の銘は「刺激があるから人生は愉しい」です。管理薬剤師になって最初のあの混乱も、今となっては最高の刺激だったと思っています笑。


まとめ:最初に困るのは当たり前。でも、全部が財産になる

管理薬剤師になって最初に困ったことを、正直に書きました。

  1. スタッフとの関係が一夜にして変わった
  2. 数字を見る・説明する仕事が突然始まった
  3. 法令上の責任者になった重さを実感した
  4. 後輩の育て方がまったくわからなかった

全部まんべんなく困ったし、全部まんべんなく財産になりました。

もし今まさに「管理薬剤師になったばかりで何もわからない」という状態なら、安心してください。ぼくも同じでした。大事なのは「困ったまま止まらないこと」です。

まず一つだけ、今日から変えてみてください。


管理薬剤師になる前に知っておきたかったこと【一言でまとめると】

最後に、当時のぼくに一言だけ伝えられるとしたら何を言うか、考えてみました。

「薬剤師の仕事と、管理の仕事は別物だと最初から割り切ること」です。

薬剤師として優秀だった人が、管理薬剤師になって苦労するのは珍しくありません。逆もしかりで、現場の調剤は平凡でも、マネジメントに才能が開く人もいる。

「薬剤師としての自分」と「管理薬剤師としての自分」は、別のスキルセットが必要な別の役割です。新しい仕事を始めた新人として、もう一度ゼロから学ぶ気持ちでいる方が、かえって早く成長できます。

プライドを捨てろとは言いません。でも「薬剤師としての経験」に頼りすぎると、管理の仕事では逆に邪魔になることがある。そこだけ、頭の片隅に置いておいてほしいと思っています。


※本記事はぼく個人の体験に基づく見解です。職場環境や状況によって異なる部分もありますが、少しでも参考になれば嬉しいです。