夏なのにもうインフル?今年こそ知りたい「ワクチンを打つ理由」|小さな子のパパママへ


まだ夏なのに、もうインフル?
もう記憶が薄れてきていますが、今年は8月からインフルエンザが流行し始めていますよね。
まだ残暑が続いているのに、もうインフルの話題なんです。
うちは4人の子どもがいるので、1人かかると家の中でリレーが始まるんですよね。今年は早めに打っておきたいな、と思ったのが、この記事を書こうと思ったきっかけです。
あなたの家では、インフルエンザワクチン、毎年どうしていますか?
「打っても結局かかるし…」という声も、正直よく聞きます。ぼくも薬剤師時代、店頭で何度もその質問を受けました。
なので今回は、元薬剤師のぼくが論文を読み込んで、「なぜ打ったほうがいいのか」を数字でお話しします。
今年はなにが起きているのか
まず事実を整理しますね。
名古屋市では、第35週(8月24〜30日)に患者報告数が流行の目安を超え、9月3日に「流行入り」が発表されました。例年なら11〜12月の話なので、かなり早いんです。
これを受けて、国も動きました。厚生労働省は8月31日、定期接種の開始を自治体の判断で前倒ししてよいと、都道府県を通じて周知しています。
| 自治体 | 高齢者の定期接種 | ポイント |
|---|---|---|
| 名古屋市 | 準備が整った医療機関では9月中から | 近年初の前倒し。子どもの助成(小6・中3・高3相当)も同様 |
| 一宮市 | 10月15日から(例年どおり) | 9月中旬に市内初の学級閉鎖 |
同じ愛知県でも、住んでいる市によって開始日が違うんですよね。
あなたの住む市は、いつから始まっていますか? 一度、市のホームページを確認してみてください。
ちなみに、乳幼児のワクチンは多くの場合「任意接種」なので、医療機関が受け付けていればいつでも打てます。費用助成の有無は市町村ごとに違います。
ワクチンで、どれくらいかかりにくくなる?
最初に紹介したいのは、Cochrane(コクラン)という信頼性の高い研究グループのまとめです。41本の臨床試験、20万人以上の子どものデータを集めて分析しています。
健康な2〜16歳の子どもに注射のワクチン(不活化ワクチン)を打った場合の結果がこちらです。
| 打たなかった子 | 打った子 | |
|---|---|---|
| 検査で確定したインフルエンザ | 30% | 11% |
| インフルっぽい症状(かぜ含む) | 28% | 20% |
つまり、「5人に打つと、1人のインフルエンザを防げる」計算なんです。
この「5人」をどう感じますか?
ぼくは、思ったより効くなと感じました。うちの4人に当てはめると、毎年だいたい1人分の発熱・看病・仕事の調整がなくなるイメージです。
ただ、正直に書いておきたいことがあります。
2歳未満の赤ちゃんについては、しっかりした試験がほとんどないんです。効かないという意味ではなく、「まだ十分に確かめられていない」という意味です。小さい子ほど重症化しやすいので、ここは次の章の話につながります。
鼻のワクチン「フルミスト」はどうなの?
うちの4人のうち、上の3人はフルミストでした。注射を怖がらないので、親としてはかなりラクなんですよね笑
フルミストは、鼻にシュッと噴霧する生ワクチンです。日本では2023年3月に承認され、2024年10月から使えるようになりました。対象は2歳以上19歳未満で、1シーズン1回、左右の鼻に0.1mLずつ噴霧します。
では、効果はどうなのか。根拠を3つ紹介しますね。
| 研究 | わかったこと |
|---|---|
| Cochraneレビュー(プラセボと比較, 3〜16歳) | 確定インフルエンザを18%から4%に減らした。7人に打つと1人を防げる |
| 大規模RCT(注射と直接比較, 6〜59か月, 約7,800人) | 注射より確定インフルエンザが54.9%少なかった。ウイルスの型がずれた年でも優位 |
| 米国の実地データ(2013〜16年) | H1N1型への効果が低く、米国は2016〜18年の2シーズン「使わないで」と勧告。2018〜19年から選択肢に復帰 |
| 日本の承認試験(2016〜17年, 2〜18歳, 1回接種, プラセボと比較) | 発症は25.5% vs 35.9%で、発症防止効果は28.8%。2〜6歳では21.6%で、統計的に意味のある差は出なかった |
小さい子どもでは、注射より効いたというデータがある一方で、「年によって効かない型があった」という歴史もあるんです。米国のデータでは、B型への効果はあり、H3N2型は注射と同程度でした。
比較試験では、生後6〜11か月の赤ちゃんでゼーゼー(喘鳴)が増えたことも報告されています。日本で2歳未満が対象外なのは、こうした理由もあるんですよね。
1回でいいの? 日米で違う接種回数
ここ、調べていて気になったポイントです。
日本のフルミストは、年齢に関係なく1回です。一方、米国では、6か月〜8歳の子はワクチンの種類を問わず「これまでに2回以上打ったことがあるか」で回数が決まります。7月1日までに2回以上の接種歴がなければ、今シーズンは4週以上あけて2回。経鼻ワクチンも同じルールです。
つまり米国の考え方だと、「インフルワクチン初めての小さい子」は2回が基本なんですよね。
うちの子たちは過去に注射での接種歴があったので、結果的に米国のルールでも1回で足りる条件でした。初めてワクチンを打つ2〜8歳の子の場合は、1回で十分かどうか、接種先で相談してみてください。
まとめると、フルミストは「海外の試験では注射より効いた」一方で、「日本の1回接種の試験では効果が約29%にとどまり、2〜6歳では差がはっきりしなかった」ワクチンなんです。日本の試験は1シーズン・1種類の流行が中心なので、これだけで「効かない」とは言えません。でも、小さい子ほど根拠が薄いのは事実です。
ぼくは、「痛くない・1回で済む」というメリットと、根拠の厚さを天秤にかけて選ぶものだと考えています。接種歴のある学童期の子には良い選択肢。初めて打つ未就学の子は、根拠が厚い注射を選ぶのも十分に合理的です。
あなたのお子さんは、注射派ですか? 鼻派ですか?
※免疫不全の方、妊婦さん、ゼラチンアレルギーがある方などは使えません。喘息がある子や、身近に免疫の弱いご家族がいる場合も、接種前に医療機関で相談してください。
本当に避けたいのは「重症化」なんです
「かかりにくくなる」より大事なのは、命に関わる事態を防げるかどうかですよね。
アメリカのCDC(疾病対策センター)が、2010〜2014年にインフルエンザで亡くなった子ども358人を調べた研究があります。
- 亡くなった子のうち、ワクチンを打っていたのは26%だけ
- 同じ時期、子ども全体の接種率は約48%
- ここから計算すると、ワクチンは死亡のリスクを約65%減らしていた
- 持病がある子でも、約51%減らしていた
打っている子が半分近くいるのに、亡くなった子の中では4人に1人しかいない。この差が、ワクチンの効果なんです。
ただし、これは「観察研究」です。もともと健康意識の高い家庭ほど接種している、といった偏りは完全には消せません。数字はやや割り引いて読むのがフェアだと思います。
それでも、「かかっても重くなりにくい」という方向は、ほかの研究とも一致しています。
あなたが一番怖いのは、熱が出ることですか? それとも、その先の重症化ですか?
打てない赤ちゃんは、どう守る?
インフルエンザワクチンは、生後6か月から打てます。逆に言うと、生まれてから半年間は打てないんです。
じゃあ赤ちゃんはどうやって守るのか。答えは「周りの人が打つ」と「ママが妊娠中に打つ」です。
バングラデシュで、妊娠後期の女性340人を2つのグループに分けた試験があります。
| ママが別のワクチン | ママがインフルワクチン | |
|---|---|---|
| 生後6か月までに確定インフルになった赤ちゃん | 16人 | 6人 |
ママが打つだけで、赤ちゃんのインフルエンザが63%減ったんです。ママの抗体が胎盤を通って赤ちゃんに届くからなんですよね。
そしてもう一つ大事なのが、家族全員で打つこと。
赤ちゃんにウイルスを持ち込むのは、たいてい上の子かパパママです。保育園や学校からもらってきたウイルスが、そのまま赤ちゃんへ。うちも何度も経験しました涙
パパのあなたは、自分の分のワクチン、予約していますか? 「自分は元気だから」は、赤ちゃんを守る理由にはならないんです。
※妊娠中の接種は、かかりつけの産婦人科でご相談ください。
何割が打てば、流行は止まるのか
ここからは、ぼくが一番書きたかった話です。
「集団免疫」という言葉、聞いたことありますよね。一定の割合の人が免疫を持つと、ウイルスが次の人にうつれなくなって、流行が広がらなくなる。打っていない人まで間接的に守られる仕組みです。
では、何割が打てばいいのか。実はこれ、2つの数字で決まるんです。
- 病気のうつりやすさ(R₀):1人の患者が何人にうつすか
- ワクチンの効き(E):打った人がどれだけ守られるか
式にすると、こうなります。
必要な接種率 =(1 − 1/R₀)÷ E
季節性インフルエンザのR₀は、研究をまとめると中央値で約1.28。これを式に当てはめると、こうなります。表の数字は「流行を止めるのに必要な接種率」です。
| うつりやすさ(R₀) | ワクチンの効き60% | 50% | 40% |
|---|---|---|---|
| 1.28(インフルの中央値) | 36% | 44% | 55% |
| 1.5(うつりやすい年) | 56% | 67% | 83% |
比べてみると、麻しん(はしか)はR₀が12〜18と非常にうつりやすい病気です。ワクチンの効き目は約97%と高いのに、それでも集団の95〜97%が接種しないと流行を止められません。それに対して、インフルエンザワクチンは理屈の上では、集団の「半分くらい」の接種で流行が止まる病気なんです。
でも、ここで大事なポイントがあります。インフルワクチンは、年によって効き具合がブレるんです。効きが落ちる年は、必要な接種率が一気に跳ね上がります。だから「みんなが少しずつ打つ」ことが保険になるんですよね。
子どもが打つと、地域が守られる
カナダで、子どもだけにワクチンを打つ地域と、打たない地域を比べた試験があります。
子どもの約8割が打った地域では、打っていない大人やお年寄りのインフルエンザが、7.6%から3.1%に減りました。間接的な防御効果は61%です。
実は日本にも、同じことを国レベルでやっていた時代があります。1970〜80年代の学童へのインフルエンザ集団接種です。後年の分析では、この接種がお年寄りの死亡を約36%、年間約1,000人分減らしていたと推定されています。
子どもは、ウイルスを地域に広げる「中心」なんです。だから子どもが打つことは、おじいちゃんおばあちゃんを守ることにもつながります。
「全員が打ったのと同じ」にはならない
ひとつ誤解しやすい点を。
集団免疫のラインを超えると、流行は燃え広がりにくくなります。でも、それで全員が守られるわけではありません。家庭内や保育園のような濃い接触の場では、やっぱりうつります。
集団免疫は「火が燃え広がらなくなるライン」であって、「火が消えるライン」ではないんですよね。
あなたの家族の接種は、地域のこのラインのどこにいると思いますか?
知っておきたい、ワクチンの限界
いいことばかり書くと、かえって信用できなくなりますよね笑 なので限界もまとめておきます。
- 打ってもかかることはある。 効き具合は年や流行株との一致度でかなり変わります。
- 効果は数か月で弱まる。 十分な免疫ができるまで約2週間、その後だんだん落ちていきます。今年のように早く流行すると、「早く打つ」と「冬の終わりまで効かせる」の両立が悩ましいところです。
- 13歳未満は2回接種が基本。 1回目と2回目の間隔をあけるので、逆算して早めに予約するのがおすすめです。
- 副反応はある。 腫れや痛み、発熱が多く、重いものはまれです。心配なことは接種前に医療機関で相談してください。
- 鼻のワクチン(フルミスト)は生ワクチン。 喘息がある子や、免疫が弱い家族がいる場合は向かないことがあります。
ワクチンは「魔法のバリア」ではなく、「確率を下げる道具」なんです。手洗いや換気、体調が悪いときに休むことと組み合わせて、はじめて効いてきます。
まとめ:ワクチンは「わが家」と「地域」の両方を守る
今日の話を3つにまとめますね。
- 子どもに打つと、5人に1人分のインフルエンザを防げる。重症化や死亡のリスクも下がる。
- 打てない赤ちゃんは、家族とママの接種で守れる。
- インフルは、半分前後が打てば流行が広がりにくくなる病気。だから一人ひとりの1回が、地域の防波堤になる。
今年は流行が早いぶん、迷っている時間がもったいないんです。
まずは今日、2つだけやってみてください。
- ☐ 住んでいる市のホームページで、接種の開始日と助成を確認する
- ☐ かかりつけの小児科に、家族の分の予約を入れる
ぼくのこどもたちは、もう9月に予防接種を始めています。一緒にがんばりましょう。
参考文献
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- 一宮市「高齢者インフルエンザ・新型コロナ予防接種」. 一宮市
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