新規個別指導シリーズ第3弾です。

前回は「管理薬剤師として準備すべきこと」を解説しました。 今回はさらに踏み込んで、「実際にどういう点を指摘されやすいのか」「当日何を持っていけばいいのか」 を具体的にまとめます。

前回・前々回をまだ読んでいない方はこちらから。
【関連記事①】薬局の新規個別指導とは?〜コンサルタントが「怖くない」と断言できる理由〜
→【関連記事②】新規個別指導で管理薬剤師が問われること〜具体的な準備ポイントを徹底解説〜


よくある指摘事例 TOP5

「どんなことを指摘されるんだろう」と不安に感じている薬局長さんは多いと思います。

結論から言うと、指摘の大半は「やっているけど記録に残っていない」か「そもそもやっていない」、この2パターンに集約されます。

以下、指摘されやすい順に5つ解説します。


第1位|薬歴のヒアリング項目に漏れがある

指摘の頻度でいうと、これがダントツ1位です。

お問い書きに書かれている項目は、基本的にすべてヒアリングして薬歴に入力するのが原則。ところが実態は、確認はしていても記録に残っていない、そもそも確認できていない、という薬局が少なくありません。

特に見落とされやすい項目がこの5つです。

① 残薬の有無 前回処方の日数より早く来局している場合、残薬があるはずです。にもかかわらず残薬欄が空欄のままというケースが多い。カレンダー機能を使って来局間隔を確認し、残薬状況を記録する習慣をつけましょう。

② アレルギー歴 「なし」と記録されているのに、抗ヒスタミン薬・吸入薬・抗ロイコトリエン薬が処方されている。これは矛盾として指摘されます。花粉症・アトピー性皮膚炎なども含めてきちんと確認し、記録してください。

③ 疑義照会の有無 ドンペリドンの食後服用、ファモチジン1錠食後服用、ゾルピデムの就寝前処方など、門前との疑義照会済みで処理されている処方が、薬歴上に記録されていないケース。疑義照会のタブから新規追加で内容を登録し、サマリへの転記も忘れずに

④ 副作用歴 あれば必ず入力。可能であれば赤字で登録し、処方監査時に禁忌として表示されるよう設定しておくのが理想です。

⑤ 飲食物摂取 グレープフルーツや納豆の摂取状況など。「食事の回数を書く欄」と勘違いしている薬剤師が多いですが、相互作用に関わる飲食物の情報を記載する欄です。


第2位|加算の算定要件を満たしていない

「算定はしているけれど、要件を正確に理解していない」というケースが非常に多い。

特に指摘が多いのが特定薬剤管理指導加算です。

算定要件を満たしていない薬歴が複数見つかると、指導のトーンが一気に変わります。

チェックすべきポイントは以下の通りです。

  • 特定薬剤管理指導加算1と3、それぞれの算定要件を正確に把握しているか
  • 加算算定時に薬歴のO欄に「〇〇薬:ハイリスク1(ロ)算定」と明記しているか
  • A欄に、どの薬剤に対して何をもって算定したかがわかる記述があるか
  • ハイリスク加算を算定した場合、OP欄に次回確認事項を記載しているか
  • 乳児への算定では、コメントが毎回同一になっていないか(毎回内容を変えること)

加算を算定しているすべての種類について、管理薬剤師が要件を「言葉で説明できる」状態にしておくことが最低限の準備です。


第3位|重要な基本的注意の指導・記録が残っていない

添付文書の「重要な基本的注意」に「指導すること」「説明すること」「注意すること」と書かれている薬剤は、指導した内容をEP欄に記録する必要があります。

説明はしているのに記録がない、というのが最も多いパターンです。

よく指摘される薬剤と指導内容の例を挙げます。

薬剤指導・記録が必要な内容
メトグルコ乳酸アシドーシスのリスク、造影剤使用時の休薬
ピオグリタゾン心不全・浮腫の症状が出たら受診するよう指導
エクア急性膵炎の初期症状(腹痛・嘔吐等)の指導
フォシーガケトアシドーシスの症状と対処法の指導
ボナロン顎骨壊死・外耳道壊死、起床時に十分な水で服用・30分は横にならない等の服用法指導
リクシアナ出血の兆候がある際の受診指導、飲み忘れた際の対処法の指導

また、適用が複数ある薬剤(例:カルベジロールは心不全・狭心症・高血圧症)は、現病名として何の疾患に対して処方されているかを薬歴に細かく記載しておく必要があります。


第4位|漫然処方への対応が薬歴に残っていない

処方自体は継続されているのに、薬剤師として効果確認や継続の必要性を評価した記録がない、というケースです。

以下の薬剤は、一定期間を超えた継続投与の場合に薬歴上にコメントが必要です。

薬剤期間薬歴への記載例
タケキャブ・PPI8週間超「維持治療の必要な難治性逆流性食道炎で使用」
モサプリド2週間超「服用により効果あり、継続服用医師了承済み。症状悪化防止のため継続服用必要と判断。」
メコバラミン90日超同上
ラメルテオン2週間超同上
キネダック・ケタス12週間超継続投与の効果確認・理由の記載

また、漫然処方の視点から、処方単価が高点数の患者(愛知県基準:処方単価1万5000円以上)については、薬歴を特に丁寧に記載しておくことをおすすめします。最低でも1年に1回は全項目を更新しましょう。


第5位|処方箋・疑義照会記録の記載不備

処方箋まわりの不備も、指摘事例として定期的に登場します。

チェックポイントは以下の通りです。

疑義照会の記録 疑義照会を行った場合、薬歴に「日時・確認相手・薬剤師印」が必要です。また、疑義照会相手は処方医であること(薬剤師や事務では不可)。しっかり記録できていれば、事務経由で確認しても処方医に繋いでいればOKです。

期限切れ処方箋への対応 期限切れの処方箋は、疑義照会で延長することはできません。患者さんに再度受診・再発行してもらう必要があります。この対応を誤って処理しているケースが稀にあります。

処方箋は薬剤師が受け取る 処方箋の受け取りは薬剤師が行う必要があります。事務スタッフが受け取っている場合は要注意。


当日持参書類チェックリスト

では実際に、指導当日に何を持参すればいいのか。

大きく「持参を求められる書類」と「自分たちで用意しておく書類」の2種類に分けて整理します。


▼ 指導側から求められる書類(対象患者分)

指定された患者のレセプト(調剤報酬明細書)をもとに確認が進みます。 通知に記載された指示に従い、以下を準備してください。

  • 処方箋(対象期間分)
  • 調剤録(対象期間分)
  • 薬剤服用歴(薬歴)(対象期間分)
  • 疑義照会の記録(該当分)
  • 患者への情報提供記録(服薬指導の記録)
  • 加算算定に関連する記録(特定薬剤管理指導加算等)

▼ 自分たちで準備しておく書類・情報

これらは「管理薬剤師として薬局全体を把握しているか」を示すために必要な資料です。 事前にまとめておくと当日スムーズです。

薬局の基本情報

  • 薬局の名刺(担当官に渡せるよう複数枚用意)
  • 薬局の住所・電話番号・開局曜日と時間のメモ

薬局の運営データ(直近3か月分)

  • 薬剤師数・事務数(常勤・非常勤の内訳)
  • GE率(月別・3か月分)
  • 集中率(処方元上位1〜3位とその割合)
  • 手帳持参率・マイナ保険証利用率
  • 返戻件数と主な理由(国保・社保別)
  • 妥結率(100%になっているか確認)

薬歴関連

  • 当日使用する薬剤の添付文書(重要な基本的注意・禁忌が確認できる状態で)
  • 併用薬の画像データ(画像参照の場合は印刷しておく)
  • 各種加算の算定要件をまとめたメモ(自分が説明できる状態であれば不要)

電子薬歴

  • 全スタッフのパスワードが要件を満たしているか事前確認(英数字・記号混在13文字以上)
  • 電子薬歴が「真正性・見読性・保存性」の3要件を満たしているか確認

▼ 当日の最終確認リスト

持参書類の準備が終わったら、以下を最終確認してください。

  • 調剤業務フローを、メモを見ずに口頭で説明できるか
  • 算定しているすべての加算の要件を言えるか
  • 担当官の質問に対する受け答えのトーン(反論しない・まず受け止める)
  • 最後の締め言葉を準備しているか

締め言葉の例: 「ご指摘いただきありがとうございます。いただいた内容は薬局スタッフ全員で共有し、直ちに改善いたします。今後、一層適正な保険調剤及び調剤報酬請求に努めてまいります。本日はありがとうございました。」


まとめ

指摘事例TOP5を振り返ると、根本にある原因は共通しています。

「やっていること」と
「書いてあること」が
一致していない。

それだけです。

逆に言えば、日常の業務が正しく行われていて、それが薬歴にきちんと記録されていれば、新規個別指導で大きく指摘されることはありません。

当日持参書類チェックリストを使って、事前準備を抜け漏れなく進めてください。 準備が整えば、あとは落ち着いて臨むだけです。


※本記事の情報は2026年時点のものです。制度の詳細や算定要件は改定されることがありますので、最新情報は地方厚生局または各種告示・通知をご確認ください。