リフィル処方箋と地域フォーミュラリ、薬局が向き合うべきは「受診回数」と「来局回数」の違い


「リフィル処方箋で来局回数が減る」という誤解
「リフィル処方になると、患者の来院来局が減るのでは?」という声を耳にしたことがあります。
正直に言うと、ぼくも制度が始まった当初、同じ誤解をしていました。1回の処方箋で最大3回まで調剤できる、と聞くと、単純計算で来局頻度が3分の1になりそうな気がしてしまいます。
でも、ここは一度立ち止まって整理したいところです。リフィル処方箋は「同一の処方箋を、医師の再受診なしに繰り返し使える」仕組みであって、患者さんが薬局に来なくてよくなる仕組みではありません。むしろ、リフィル利用中も患者さんは決められた間隔ごとに薬局へ来局し、そのつど調剤を受けます。直接減るのは、医師の診察を受ける「受診回数」であって、薬局への「来局回数」ではないんです。
この違いを整理せずに「来局回数が減る」という前提で経営を語ってしまうと、対策の方向性がずれてしまいます。今回は、骨太方針2026に出てくる「長期処方」「リフィル処方箋」「地域フォーミュラリ」を、それぞれ何を減らす仕組みなのかという視点で整理し、薬局経営への影響を深掘りしていきます。
骨太方針が示している内容
骨太方針2026には、こう書かれています。長期処方やリフィル処方箋の活用、地域フォーミュラリの全国展開、休薬・減薬などの効果的・効率的な治療の促進等により、給付の効率化や適正化を図りつつ、質の高いサービスを提供する、という一文です。
この一文には、実は性質の異なる3つの施策が並んでいます。
- 長期処方:1回の処方箋で受け取れる日数そのものを延ばす施策。1回あたりの受け取り日数が増えれば、単純に薬局への来局回数(調剤機会)が減ります。
- リフィル処方箋:同一処方箋を医師の再受診なしに繰り返し使える施策。減るのは医師への受診回数であり、薬局への来局は原則、リフィルを利用してもそのつど必要です。
- 地域フォーミュラリ:地域の医療機関・薬局が連携し、同種同効薬の中から優先的に使用する医薬品を地域単位で取り決める仕組み。来局回数や受診回数そのものではなく、処方される薬剤の選び方に関わる施策です。
骨太方針では、地域フォーミュラリについて「全国展開」という言葉が使われています。すでに一部地域での先行実施はありますが、限られた地域の取り組みから、標準的な仕組みへ格上げされていく段階に入った、ということです。
皆さんの地域では、地域フォーミュラリの検討や、地区医師会・薬剤師会での話し合いは、もう始まっていますか。まだであれば「まだ来ていない」のではなく「これから確実に来る」ものだと捉えたほうがいいと思います。
なぜ国はこの方向に進むのか
長期処方・リフィル処方箋・地域フォーミュラリは、それぞれ減らす対象は違いますが、根っこにある狙いは共通しています。「同じ治療効果であれば、より効率的な形で提供する」という発想です。
骨太方針全体を貫く「現役世代の保険料率を引き下げる」という方針と、医療の質を落とさずに給付を効率化するという方針は、両立が求められています。この両立を実現する現実的な手段として、受診回数の適正化(リフィル)、調剤機会の適正化(長期処方)、薬剤選択の適正化(地域フォーミュラリ)が、セットで進められているんです。
つまりこれは「薬局の調剤機会を狙い撃ちで減らすための制度」ではなく、「医療資源全体の使い方を見直すための制度」であり、その中に、来局回数に直接影響する施策(長期処方)と、直接は影響しない施策(リフィル処方箋)が混在している、と理解したほうが経営判断を誤りません。
薬局にとってのリスクとチャンス
リスクの面は率直にお伝えします。来局回数に直接影響するのは、リフィル処方箋よりも、むしろ長期処方の拡大です。1回あたりの受け取り日数が伸びれば、慢性疾患患者を多く抱える薬局ほど、調剤機会そのものが減っていきます。
一方、リフィル処方箋がもたらす変化は、回数の減少ではなく「患者と医療機関の接点の変化」です。患者さんが医師に会う頻度が減る分、体調変化や副作用の兆候に最初に気づく立場は、相対的に薬局・薬剤師に寄ってきます。リフィル処方箋では、調剤時に患者の状態を確認し、必要に応じて処方医に情報提供する役割が明確に求められており、「毎回同じ薬を渡すだけの窓口」から「次回受診が不要と判断できるだけの薬学的観察を行う専門職」への転換が、制度上求められているということです。
地域フォーミュラリについても同様です。地域で使用する医薬品の選定に薬局・薬剤師がどれだけ関与できるかは、地域における薬局の専門性の評価に直結します。フォーミュラリの検討に呼ばれる薬局と、蚊帳の外に置かれる薬局とでは、地域医療における立ち位置がまったく変わってきます。
正直な話をすると、ここで問われているのは調剤の回数ではなく、薬局の”発言力”と”観察の質”だと思います。長期処方で調剤機会そのものが減る流れの中で、いかに1回あたりの薬学的価値を高め、地域の医療連携の中で存在感を示せるか。それが、この一連の制度変更の本質的な論点です。
皆さんの薬局は、地区医師会・薬剤師会主催の会合に、経営者自らあるいはスタッフを継続的に参加させていますか。フォーミュラリの議論が本格化したとき、そこに参加していない薬局は、決定事項を後から知らされる立場になってしまいます。
経営者として、今から動けること
具体的には、次のような準備が考えられます。
- 長期処方の対象になり得る患者の割合を、レセプトデータで事前に把握しておく
- リフィル処方箋の調剤時に行う経過確認・情報提供のフローを、今のうちに標準化しておく
- 地区の医師会・薬剤師会の動きを継続的にウォッチし、フォーミュラリ関連の会合には積極的に参加する
- トレーシングレポートなど、医師との情報連携の質を高める取り組みを、フォーミュラリ議論への”入場券”として位置づける
長期処方によって調剤機会そのものが減ることを前提にした経営とは、「回数が減っても大丈夫な収益構造」を作ることであり、「回数を減らさないよう頑張る」ことではありません。またリフィル処方箋については、回数減少というより「医師との情報連携の質」が問われる制度だと捉え、準備の方向性を分けて考えることが大切です。
おわりに
「来局回数が減る」という言葉でひとくくりにしてしまうと、本当に備えるべきポイントを見誤ります。減るのは制度によって違う。リフィル処方箋は受診回数、長期処方は来局回数、そして地域フォーミュラリは薬剤選択への関与度。それぞれ向き合い方が変わってきます。
まずは自店の処方箋のうち、長期処方に該当するものとリフィル対象になり得るものが、それぞれどれくらいあるのか。レセプトデータで一度、切り分けて確認してみてください。
出典 経済財政運営と改革の基本方針2026(令和8年7月21日閣議決定) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2026/decision0721.html
