シフトを組んでいたあの夜のことを、今でも覚えている

管理薬剤師になってしばらく経ったころ、毎月のシフトを組むのが憂鬱になっていた時期がありました。

月末になると、スタッフから次月の希望休が集まってくる。それを見ながら「あ、またこの週は詰んでる」とため息をつく。希望が重なってどう調整しても誰かが損をする、という週が必ずあって、誰かに無理をお願いしなければならない。

しかも当時、トラブルが一つではなかったんです。複数の問題が同時に進行していた。シフトの不満を口にするスタッフ、急な欠勤が増えているスタッフ、それぞれへの対応を並行してやっていた時期が、ぼくの管理薬剤師時代の中で最もしんどかった時間でした。

どうやって乗り越えたか。一言で言えば、面談を重ねることでした。地味ですが、それ以外に方法がなかった。

今日は、そのときの話を正直に書きます。


重なっていたトラブルの全貌

当時、同時進行していた問題を整理するとこうなります。

トラブル①|シフトへの不満が表面化した

「また希望が通らなかった」という不満を、あるスタッフが同僚に話しているのが耳に入りました。直接ぼくに言うわけではなく、横に広がっていく。

最初は「全員の希望を通せるはずがないし、しかたない」と思っていました。でも、その不満が現場の雰囲気を少しずつ変えていった。特定のスタッフだけが割を食っているように見えたとき、放置できなくなりました。

トラブル②|急な欠勤の連絡が増えた

別のスタッフで、当日の朝に「体調不良で休みます」という連絡が続く時期がありました。

1回2回なら誰でもあります。でも頻度が上がってくると、残るスタッフへの負担が増えて、現場の不満がさらに積み重なっていく。「ずるい」とは誰も言わないけれど、空気は確実に変わっていく。管理薬剤師として見ていて、これが一番つらかった部分かもしれません。

トラブル③|シフトの「不公平感」が蓄積していた

土日祝日の出勤回数、残業が発生しやすい時間帯のシフト配置……。数字で見れば均等に組んでいるつもりでも、「なんで自分だけ」という感覚は数字では測れません。

ぼくはシフトを組むとき、できるだけ公平になるよう気をつけていたつもりでした。でも「つもり」は主観であって、受け取る側の感覚とズレていることがある。そのズレを放置していたのが、じわじわと問題を大きくしていました。

あなたの職場で、シフトへの不満が「空気」になっていると感じることはありますか?


面談を重ねてわかったこと

複数のトラブルが重なって、「このままではまずい」と感じたとき、ぼくが選んだのは一人ひとりと個別に話す、という方法でした。

特別なことはしていません。15〜20分、二人で話せる場所を作って、「最近どう?」から始める。それだけです。

「最近どう?」は答えにくいという意見もあります。確かに、質問が広すぎて「何を話せばいいんだろう」と相手が迷うことはある。ぼくも最初はうまくいかないことがありました。でも、振り返ってみると、問題は言葉そのものよりその後の聴き方だったと思っています。「大丈夫です」で終わらせず、「大丈夫じゃないとしたら、どのあたりかな?」と返せるかどうか。余白のある問いかけだからこそ、相手が「本当に言いたいこと」を話し始めることもある。

でも、やってみてわかったことがありました。

わかったこと①|不満の中身は「シフト」ではなかった

シフトへの不満を口にしていたスタッフと話してみると、本当に伝えたかったのは別のことでした。

「自分の事情をわかってもらえているのかどうか不安だった」「一度ちゃんと話を聞いてほしかった」。シフトそのものより、「自分のことを見てもらえているか」という不安が根っこにあったんです。

面談で「あなたのこういう事情はわかっている、だからこう組んだ」と伝えたら、表情が変わりました。結果としてシフトは変わっていないのに、不満が落ち着いた。管理薬剤師として、初めて「説明責任」というものを実感した瞬間でした。

わかったこと②|欠勤が増えていたスタッフには、職場外の事情があった

急な欠勤が続いていたスタッフと話してみると、家庭の事情を抱えていることがわかりました。

「言いにくくて、黙っていた」と本人は言いました。言いにくかったのはよくわかる。でも、事情を知らなければ対応のしようがない。シフトの組み方を少し変えること、繁忙時間帯の負担を調整することで、欠勤の頻度は落ち着いていきました。

面談しなければ、ぼくはずっと「なぜ休むのか」がわからないまま不満を持ち続けていたかもしれません。話してもらえて初めて、動けた。

わかったこと③|「不公平感」は数字では解消できない

土日出勤の回数を均等にしても、「不公平だ」と感じるスタッフはいます。

それは感情の問題だから、数字で反論しても意味がない。大事なのは「なぜそう組んだか」のプロセスを見せることでした。全員の希望を完全に通すことはできない。でも、誰の事情を優先したか、どういう基準で判断したかを透明にすることで、納得感は大きく変わります。

面談の中で「こういう基準でシフトを組んでいる」と話すようにしてから、「不公平だ」という声は少しずつ減っていきました。


面談で気をつけていた3つのこと

「面談を重ねる」と言っても、ただ話せばいいわけではありません。ぼくが試行錯誤しながら意識するようになったことを3つ書きます。

①「聞く」を8割にする

管理薬剤師として話をしようとすると、つい「こちらの説明」が多くなります。最初のころのぼくがそうでした。

でも、スタッフが求めているのは「聞いてもらうこと」であることが多い。ぼくが話す割合を減らして、相手が話す時間を増やすだけで、面談の質がまったく変わりました。「どう思う?」「それはどういう状況だったの?」と問いかけて、あとは待つ。

②「責めない」を最初に伝える

面談を設定すると、スタッフは「何か怒られるのかな」と身構えることがあります。

冒頭で「責めたいわけじゃなくて、状況を知りたくて話したかった」と伝えるだけで、相手の表情が変わります。これは小さいようで、面談全体の空気を決める大事な一言でした。

③「決定事項」と「相談事項」を分ける

シフトの話をするとき、「決まっていること」と「まだ調整できること」を最初に分けて伝えるようにしました。

全部が交渉可能に見えると、スタッフは「もっと要求できる」と思って話が広がりすぎる。逆に全部が決定事項に見えると、話す意味がないと感じる。「ここは変えられる、ここは変えられない」を最初に明示する方が、話がスムーズに進みました。


まとめ:シフトのトラブルは、シフトだけの問題じゃない

管理薬剤師として経験したシフト・労務トラブルを振り返ると、共通して言えることがあります。

問題の表面に見えているのは「シフト」でも、根っこにあるのはいつも「人と人の間のズレ」でした。

事情を知らなければ動けない。でも話さなければ事情はわからない。面談はその当たり前のことを、ぼくに教えてくれました。

地味で時間がかかる方法ですが、それ以外に近道はなかった。今になって、はっきりそう思います。

今、シフトや労務のことで頭を抱えているなら、まず一人と話してみてください。解決するかどうかより、「話を聞いた」という事実が、現場の空気を変えることがあります。


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※本記事はぼく個人の体験に基づく見解です。職場環境やスタッフの状況によって、適切な対応は異なります。参考程度にお読みください。