これまで3回にわたって、骨太方針2026の中から薬局経営に関わる論点を深掘りしてきました。

①OTC類似薬の保険給付見直しとスイッチOTC化 ②リフィル処方箋と地域フォーミュラリ ③医療DX・電子処方箋

元同僚や知人の薬剤師と話す機会、それにSNSや業界ニュースで薬局側の反応を見ていて、この3つの論点への「反応の温度差」がはっきり分かれていることに気づきました。今回は制度の中身の振り返りというより、この温度差そのものについて書いてみようと思います。

薬局側に共通する「様子見」の空気

正直に言うと、①と②については、元同僚や知人の薬剤師との会話でも、SNSや業界ニュースで見かける現場の声でも、積極的な反応を目にすることはあまりありません。

「OTC類似薬の保険給付が見直されるかもしれない」という話には、「まだ検討段階でしょう?」という反応が大半です。「リフィル処方箋や地域フォーミュラリが広がったら来局回数が減るかもしれない」という話にも、「うちの地域はまだそこまで進んでいないから」という声が目立ちます。

どちらも間違ってはいません。骨太方針2026に書かれているのは、あくまで方向性と検討の指示であって、明日から制度が変わるわけではないからです。でも、ぼくが薬局経営者だったら、この「まだ先の話だから」という感覚こそが一番怖いなと思っています。

なぜ③だけ、反応が違うのか

一方で③の電子処方箋・医療DXについては、少し毛色が違います。

ぼく自身、ドラッグストアで薬剤師として働いていた頃、集患・集客に直結するテーマには、現場も本部も投資判断がかなり早かった実感があります。「これをやれば患者さんが来る」という因果関係がはっきりしていたからです。

つまり①②③、制度としては同じ骨太方針2026の中に書かれているのに、薬局側の反応速度を決めているのは「これが自分たちの収益や集客にどうつながるかが、目に見えて分かるかどうか」なんだと思います。①②はその因果関係が見えにくいから様子見になり、③は見えやすいから動きが早い。当たり前と言えば当たり前なのですが、これはそのまま経営判断の癖として、これからも繰り返されていくはずです。

様子見のコストは、後から効いてくる

ここで一つ、コンサルタントとして伝えたいことがあります。①②のように因果関係が見えにくい論点ほど、様子見のコストは静かに、でも確実に積み上がっていくということです。

制度が変わってから対応を始めても、間に合わないわけではありません。でも、地域のフォーミュラリ議論も、OTC体制の再構築も、一朝一夕にはできないことばかりです。周りの薬局が様子見をしている今のうちに動いておくことが、そのまま数年後の差になります。

①のOTC類似薬・スイッチOTC化であれば、登録販売者の育成やOTC相談対応力の強化は、制度が固まる前から始められます。②のリフィル処方箋・地域フォーミュラリであれば、来局回数に依存しない収益設計(服薬フォローアップの算定強化など)や、地域の医師会・フォーミュラリ議論への薬局側からの関与は、待っていても向こうからは来ません。③の電子処方箋・医療DXについては、ドラッグストア時代の実感からも、投資を「コスト」ではなく「参入障壁」として前倒しで判断する薬局が、数年後に差をつけているはずです。

おわりに

3回シリーズで骨太方針2026を読み解いてきましたが、結局のところ伝えたいことは一つです。制度への反応の濃淡があるのは自然なことですが、その濃淡がそのまま経営判断の先送りになっていないか、一度立ち止まって確認してみてほしい。

読んでくださった薬局経営者の方が、①②③のうちどれか一つでも「これは今のうちに手をつけておこう」と思えるものがあれば、この3回のシリーズを書いた意味があったなと思います。


出典:経済財政運営と改革の基本方針2026(内閣府、令和8年7月21日閣議決定)