人生の目的を考えたら、良い意味で手段を選ばなくなった〜薬剤師を辞めた本当の理由〜

あの夜のことは、今でもよく覚えています。
子供たちが寝静まった後、リビングのソファに一人で座って、スマホの画面をぼんやり眺めていました。転職サイトのページです。
「コンサルタント 未経験 40代」
検索窓にそう打ち込んで、ヒットした求人の数を見て、正直笑ってしまいました 笑
薬剤師としてのキャリアは当時15年超ありました。管理薬剤師もやりました。エリアを束ねるマネージャーも経験しました。EBMを学ぶ勉強会を10年以上続けて、書籍も出させていただきました。
でも、コンサルタント業界の求人票には「未経験」の文字がどこまでも壁のように立ちはだかっていました。
それでもぼくは、その夜、応募ボタンを押しました。
なぜか。
「薬剤師が好きじゃなくなったから」ではありません。逆です。薬剤師という仕事が心から好きで、医療をもっと良くしたいという夢があったから、その夜、ぼくは薬剤師という枠から一歩踏み出すことを選んだんです。
薬剤師の仕事は、今でも心から好きです
最初にはっきり言っておきたいことがあります。
薬剤師という職業を、ぼくは今でも心から尊敬しています。
患者さんの本音を引き出す服薬指導。誰も気づかなかった副作用を発見して処方を変えた経験。論文を根拠に処方医に提案して、患者さんの処方薬がスッキリ整理できて感謝された日の達成感。
こういった瞬間が積み重なって、ぼくの薬剤師人生はできています。
あなたにも、そういう瞬間があるのではないでしょうか。「この仕事をやっていて良かった」と思える瞬間が。
だから最初に言っておきます。ぼくは薬剤師を「捨てた」のではありません。それだけは絶対に違います。
でも、ある時期から、ぼくの中に一つの問いが生まれ始めました。
「薬剤師として働き続けることと、医療を本当に良くすることは、イコールなのか?」
好きであることと、夢を叶えることは、別の話だと気づきました
薬剤師として働きながら、ずっとくすぶっていることがありました。
処方提案をして、医師が変えてくれる。患者さんの薬が整理される。その瞬間はたしかに嬉しいんです。でも、薬局の窓口から見える景色には限界がありました。
病院そのものの経営が変わらなければ、医療の仕組みは変わりません。薬剤師がどれだけ頑張っても、制度設計や組織の構造が変わらなければ、患者さんに届けられるものの質は頭打ちになってしまいます。
ぼくがやりたいのは、薬を渡すことじゃない。医療をもっと良くすることです。
そう気づいた時、「薬剤師として働き続けることが、その夢への最短ルートなのか」という問いが、頭から離れなくなりました。
もう一つ、正直に言わせてください。
好きであることと、家族を養っていけることは、別の話なんです。
4人の子供がいます。養育費はこれからどんどんかかります。薬剤師として誠実に働いてきたつもりですが、給与の天井は見えていました。医療を良くしたいという夢と、家族と笑顔で暮らし続けたいという夢、その両方を叶えるためには、今の枠の中にいることが本当に正解なのか、と。
これは薬剤師という仕事への不満ではありません。現実を冷静に見た時の、正直な問いです。
あなたは、自分の「夢」と「手段」を混同していないでしょうか。薬剤師であることが目的になっていないか、一度だけ立ち止まって考えてみてほしいんです。
40歳という現実と、最後のチャンスという覚悟
問いは持っていました。でも、なかなか踏み出せませんでした。
理由は一つです。怖かったから 笑
40歳を超えていました。コンサルタント未経験。4人の子供を抱えています。転職エージェントに相談すれば、全員が同じ言葉を返してきました。
「年齢的に難しいですね」 「未経験では年収が大幅に下がりますよ」 「薬剤師の求人の方がすぐ決まりますよ」
そしてその後は音信不通 涙
正直、見捨てられた感覚でした。
でも、ある夜、ふと思ったんです。
もし今動かなかったら、自分は5年後、10年後に後悔しないか。
「40代での未経験転職は難しい」は確かにそうかもしれません。でも、45歳になったら、50歳になったら、もっと難しくなります。動けるのは今しかない。むしろ今が最後のチャンスだと、ぼくは冷酷なくらい冷静に自分の状況を見ました。
薬剤師という資格はあります。これはどこへ行っても消えません。失うものはない。あるのは、動かなかった時の後悔だけです。
そう決めた瞬間から、ぼくの転職活動が始まりました。
115社落ちました。それでも諦めなかった理由
結果から言います。115社に応募して、内定は1社でした。
書類選考で落ちます。面接まで進んでも落ちます。最終面接で落ちます。
数十社、また数十社。子供たちが寝た後に黙々と応募し続けた夜が、何回あったかわかりません。
「本当にこれで良かったのか」と自問する夜も、当然ありました。
それでも諦めなかったのは、目的がはっきりしていたからだと思っています。
薬剤師を辞めることが目的じゃありません。医療を良くすることと、家族と笑顔で暮らし続けることが目的です。その目的のために、今は手段としてコンサルタントへの転職を選んでいる。
目的さえブレなければ、手段の選択は恐れるものじゃないんです。むしろ、目的が明確であればあるほど、どんな手段を選んでも迷わなくなります。
これが、「人生の目的を考えたら、手段を良い意味で選ばなくなった」という言葉の意味です。
失敗談も一つ正直に言います。最初のうち、自己PRに「薬剤師として培ったコミュニケーション能力」みたいなことを書いていました。今思えば、採用担当者が「で、何ができるの?」と思うだけの、何も伝わらない文章でした 涙
課題→施策→成果の流れで書き直して、初めて面接に呼ばれる回数が増えました。目的が明確なら、手段の磨き方も変わります。
薬剤師を捨てたのではなく、夢のために選び直しました
コンサルタントになって、改めて気づいたことがあります。
薬剤師時代に身につけたスキルが、そのまま今の仕事に生きているんです。
患者さんの本音を引き出すヒアリング力は、クライアントの本当の課題を引き出す力になります。事実→問題→提案のトレーシングレポートの構造は、上司や先輩たちの行う経営提案の構造とまったく同じでした。EBMで培った「根拠を見て、批判的に吟味して、現場に適用する」思考は、経営データの読み方にそのまま使えました。
薬剤師を捨てたのではなく、薬剤師として積み上げてきたものを全部持って、
新しい場所に立ったんです。
そして今、病院経営の上流から医療を変えることに、毎日向き合っています。薬局の窓口から見えていた景色とは違う景色が、確かにそこにあります。
まだ道半ばです。夢が叶ったとは全然思っていません。でも、諦めなくて良かったと、心から思っています。
まとめ〜手段に縛られる前に、目的を問い直してほしい
今日お伝えしたかったことを、一言でまとめます。
「何のために働くのか」という目的が明確になれば、手段は恐れるものじゃなくなります。
薬剤師という仕事が好きであることと、その枠の中に留まることは、別の選択です。好きだからこそ、その先の夢を叶えるために、別の手段を選ぶことがあります。
ぼくにとってそれが、コンサルタントへの転職でした。
40歳・未経験・4児の父・115社落ちた。客観的に見れば無謀な挑戦だったかもしれません。でも目的がはっきりしていたから、一度も「やめておけばよかった」とは思っていません。
転職を考えているあなたへ。
まず一つだけ問いかけてみてください。
「自分は何のために働いているのか」
その答えが出た時、次に何をすべきかは、自然と見えてくるはずです。今日、その問いに向き合うことから始めてみてください。
