【シリーズ総括】エリアマネージャーを経て見えた「マネジメントの本質」


うまくやれたのかは、今もわからない
エリアマネージャーだった時期のことを、ときどき思い出します。
あのとき自分はうまくやれていたのか。今も答えは出ていません。というより、たぶん一生出ないと思っています。
店舗と店舗の距離は遠く、移動だけで時間が溶けていく。スタッフの経験も意欲もバラバラで、同じやり方が通用しない。そして自分自身も、気づけば疲弊していた。
正直に言えば、「あの状況では、たぶん誰がやっても難しかった」と思う部分もあります。でも同時に、「もっとうまくやれたんじゃないか」という思いも消えない。この二つが、今もぼくの中に同居しています。
このシリーズの最後に、あの経験から見えたものを書いておきます。答えではありません。今のぼくが、ここまでで掴めていることの記録です。
マネジメントの本質は、たぶん二つある
これまでの記事で書いてきたことを、いま自分なりに束ねると、マネジメントの本質は二つに集約されると思っています。
本質①|人を介して成果を出すこと
管理薬剤師までは、自分が動けば成果が出ました。自分が調剤すれば、自分が服薬指導すれば、患者さんの役に立てた。
でもエリアマネージャーになると、自分が動いても成果は出ません。複数の店舗を自分の手で回すことは物理的に不可能だから。人に動いてもらって、初めて成果が出る。
頭ではわかっていました。でも、ぼくは最初、全店舗を自分の足で回ろうとした。自分の目で見ないと不安だったから。今思えば、あれは「自分でやる」という管理薬剤師時代の癖が抜けていなかっただけです。
本質②|人が動きやすい環境・仕組みを作ること
では「人を介して成果を出す」ために何をするのか。それが、環境と仕組みを作ることでした。
店長が判断しやすいように基準を示す。スタッフが迷わないようにルールを見える形にする。報告が自然に上がってくる流れを作る。マネージャーの仕事は、自分が動くことではなく、人が動ける状態を整えることだったんです。
ぼくはこの仕組み作りに挑戦して、正直、うまくいきませんでした。でも方向性は間違っていなかったと今も思っています。ただ、やり方が甘かった。
そのために必要だった、二つのこと
この二つの本質を実現するために、必要なものが二つあると思っています。仕事に対しての姿勢と、人に対しての姿勢です。
仕事に対して|正解のない問いに、問い続けること
マネジメントには、正解がありません。
この店長にはどこまで任せるべきか。この数字の背景に何があるのか。この店舗の課題は何なのか。全部、正解のない問いです。しかも状況は刻々と変わるから、昨日の答えが今日は通用しない。
だから、問い続けるしかない。答えが出ないまま、それでも考え続ける。この「答えが出ないことに耐えながら考え続ける」という姿勢が、マネジメントには必要でした。
ぼくはこれが苦手でした。早く答えを出したくて、焦って動いてしまう。今なら、その焦りこそが判断を誤らせていたとわかります。あなたは、答えの出ない問いを抱え続けられますか?
人に対して|信頼関係が、すべての土台
そして、メンバーに対しては、信頼関係がすべての土台でした。
どんなに良い仕組みを作っても、信頼関係がなければ機能しません。報告の仕組みを作っても、信頼がなければ本当のことは上がってこない。任せようとしても、信頼がなければ相手は動けない。
ぼくが一番失敗したのは、まさにここでした。担当が増えたとき、新しく関わることになった店長との信頼関係を築く時間を、確保できなかった。関係の土台がないまま仕組みだけを持ち込もうとして、うまくいかなかった。
仕組みは、信頼の上にしか建たない。これが、ぼくがあの経験から得た一番大きな学びかもしれません。
それでも、あの経験があったから今がある
複雑な心境だと書きました。でも、一つだけはっきり言えることがあります。
あの経験がなければ、今の仕事はできていません。
40歳を超えて、115社に応募して、114社に落ちて、医療経営コンサルタントになりました。エージェント全員に「難しい」と言われた転職です。それでも一社が拾ってくれたのは、たぶん、マネジメントの経験があったからだと思っています。
コンサルタントの仕事は、まさに「人を介して成果を出す」「環境と仕組みを作る」ことそのものです。自分が現場で動くわけではない。医療機関の人たちに動いてもらうために、環境を整える。そして、正解のない問いに問い続ける。
エリアマネージャーとしてうまくやれなかった経験が、そのまま今の仕事の土台になっている。失敗も、葛藤も、疲弊した日々も、全部が今につながっている。それだけは、確かなことです。
まとめ:答えは出ない。でも、問い続ける
エリアマネージャーシリーズの総括として、今のぼくが掴んでいることを整理します。
- マネジメントの本質は「人を介して成果を出す」「人が動きやすい環境・仕組みを作る」の二つ
- 仕事に対しては、正解のない問いに問い続ける姿勢が必要
- 人に対しては、信頼関係がすべての土台。仕組みは信頼の上にしか建たない
- うまくやれたかはわからない。でも、その経験のすべてが今の土台になっている
ぼくの座右の銘は「刺激があるから人生は愉しい」です。エリアマネージャー時代は、正直、愉しいと思える余裕なんてありませんでした。疲弊して、悩んで、うまくいかなくて。
でも今なら言えます。あれも全部、刺激だった。だからこそ、今の自分がここにいる。
もし今、マネジメントの正解が見つからなくて苦しんでいるなら、それでいいんだと思います。正解は出ません。でも、問い続けることをやめなければ、その経験は必ず後の自分を支えてくれます。
今日の問いを、一つだけ抱えて帰ってみてください。
エリアマネージャーシリーズ全記事
← ①エリアマネージャーになって最初にぶつかった壁【複数店舗の難しさ】
← ②エリアマネージャーとしての店長との関わり方:任せる難しさと、今なら分かる反省点
← ③現場を離れる葛藤:患者さんと関われなくなった薬剤師マネージャーの本音
← ④複数店舗の数字をどう見るか:エリアマネージャーが試行錯誤した比較の視点
※本記事はぼく個人の体験に基づく見解です。マネジメントの正解は組織や状況によって異なります。参考程度にお読みください。
