点数がつく前から、ずっとやっていたこと

ぼくがトレーシングレポートを書き始めたのは、服薬情報等提供料という加算が存在する前のことです。

きっかけは、純粋に「この情報、先生に伝えたい」という気持ちでした。患者さんから聞いた困りごと、服薬状況の変化、気になる副作用の兆候。電話の疑義照会では伝えきれない内容を、文書にまとめて送り始めた。それだけのことです。

ある日、医師からわざわざ薬局に直接電話がかかってきたことがありました。「レポートを送ってくれてありがとう。あの情報で処方を変えることができた」という内容でした。正直、びっくりしました笑。そして、続けてよかったと思いました。

それがあとから、服薬情報等提供料という形で点数がつくようになった。「やっていたことが制度として評価されるようになった」という感覚で、素直に嬉しかった記憶があります。

ただ、いざ算定しようとすると、要件がよくわからない。「1と2と3ってどう違うの?」「医療機関からの依頼がないと取れないの?」「毎月算定していいの?」……疑問が次々と出てきた記憶があります。

今はコンサルタントとして医療機関側にも関わっているので、薬局側と医療機関側の両方の視点から、この制度を整理できるようになりました。2026年度の改定内容も踏まえて、改めてまとめてみます。


そもそも服薬情報等提供料とは何か

服薬情報等提供料は、薬局が患者さんの服薬情報を医療機関や介護支援専門員(ケアマネ)に文書で提供した場合に算定できる点数です。

トレーシングレポートは、この「文書による情報提供」の手段として位置づけられています。つまり、トレーシングレポートを適切に書いて送ることが、服薬情報等提供料の算定につながる、という関係です。

「トレーシングレポートを書くと点数が取れる」というのは、この仕組みを指しています。ただし、どの区分で算定するかによって要件がまったく異なるんです。ここをしっかり理解しておかないと、算定漏れや誤算定につながります。


2026年改定後の点数と区分を整理する

2026年度(令和8年度)の改定では、服薬情報等提供料の点数そのものに変更はありません。ただし、関連する算定項目の再編(かかりつけ薬剤師指導料の廃止・服薬管理指導料への統合など)があり、注書きの整理が入っています。まず現行の点数と区分を確認しておきましょう。

区分点数算定回数提供先起点
服薬情報等提供料130点月1回保険医療機関医療機関からの求め
服薬情報等提供料2(イ)20点月1回保険医療機関薬剤師の主体的判断
服薬情報等提供料2(ロ)20点月1回保険医療機関リフィル調剤後の提供
服薬情報等提供料2(ハ)20点月1回介護支援専門員薬剤師の主体的判断
服薬情報等提供料350点3月に1回患者または家族等薬剤師の主体的判断

2026年改定で注目すべき変更点は、同意対象の拡大です。これまで「患者」とされていた同意対象が、「患者又はその家族等」に広がりました。在宅や認知症の患者さんを支える家族からも同意が取れるようになったということで、実務上の幅が広がっています。

あなたの薬局では、現在どの区分で算定していますか?


「1」と「2」、何が違うのか:起点の違いがすべて

ここが最もわかりにくいポイントだと思います。ぼく自身も薬剤師時代に混乱した記憶があります笑。

一言で言えば、「誰が動き出したか」で区分が変わります。

服薬情報等提供料1(30点):医療機関から求められた場合

医療機関から「この患者の服薬状況を教えてほしい」という依頼があって、それに応じて文書で情報提供した場合に算定します。

点数が高い(30点)のは、医療機関側に情報提供を求める体制があることが前提になっているからです。医療機関が能動的に動いている分、連携の質が担保されているとみなされています。

ただ実態として、医療機関から薬局に「情報を文書で送ってほしい」と依頼してくるケースは、まだそれほど多くないのが現状です。コンサルタントとして医療機関に関わっていても、この仕組みを積極的に活用している医療機関はまだ少数派だと感じています。

服薬情報等提供料2(20点):薬剤師が必要と判断した場合

薬剤師が「この患者さんの情報を医師に伝える必要がある」と自ら判断して文書提供した場合です。トレーシングレポートの多くは、この区分に該当します。

医療機関からの依頼がなくても算定できる。これが服薬情報等提供料2の強みです。薬剤師が主体的に動いたことに対して点数がつく、という設計です。

「医療機関から依頼されないと算定できない」と思い込んでいた薬剤師が、実はぼくの周りにも結構いました。そんなことはなくて、薬剤師側が「必要」と判断すれば算定できます。ここは誤解しないようにしたいポイントです。


医療機関側から見た服薬情報等提供料

ここからは、コンサルタントとして医療機関に関わっている立場からの視点です。

正直に言います。医療機関の多くは、服薬情報等提供料という制度をよく知りません。

「薬局が算定するものでしょ」という認識は正しいのですが、だからこそ医療機関側がどう動けばいいかを考えていない。服薬情報等提供料1のように「医療機関からの求め」を起点とする区分があるにもかかわらず、積極的に薬局へ情報提供を依頼している医療機関はほとんど見かけません。

一方で、薬局からトレーシングレポートが送られてきたとき、医療機関側がどう処理しているかというと……前回の記事でも書きましたが、事務スタッフが処理方法を知らずにゴミ箱へ、というケースが実際にあります

医療機関側の担当者の方がこの記事を読んでいるなら、ぜひ一度確認してほしいことがあります。

  • 薬局からFAXで届いた書類はどのルートで医師に届いているか
  • 「トレーシングレポート」という書類を事務スタッフが識別できているか
  • 地域連携室がある場合、薬局への案内はできているか

これを整備するだけで、薬局との連携の質がガラッと変わります。薬局側が一生懸命書いたレポートが、ちゃんと医師に届く仕組みをつくってほしいんです。


算定するときに気をつけたい実務上のポイント

制度を理解したうえで、実務でよく引っかかるポイントをまとめます。

① 患者(または家族等)の同意は必須

どの区分でも、算定には患者または家族等の同意が必要です。2026年改定から「家族等」も同意対象に含まれることになりました。在宅患者や認知症患者で本人からの同意取得が難しいケースにおいて、柔軟に対応できるようになっています。

同意の記録は必ず薬歴等に残しておくこと。これは査定対策としても重要です。
薬歴冒頭の「患者サマリ」に同意を得たことを日付付きで記載しておきましょう

② 「文書による提供」が要件

口頭での情報提供では算定できません。FAX・郵送・電子的な方法など、文書として残る形で提供することが必要です。トレーシングレポートをきちんと書いて送ることが、そのまま算定要件を満たすことになります。

③ 算定回数の上限を確認する

服薬情報等提供料1・2は月1回、服薬情報等提供料3は3月に1回が上限です。同じ患者さんに複数回レポートを送っても、算定できるのは月1回まで。熱心に書きすぎて気づかず複数算定、というミスには注意が必要です。

④ 2026年改定の関連変更:服薬管理指導料との関係

2026年改定では、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料が廃止され、服薬管理指導料に統合されました。服薬情報等提供料の注書きが参照する関連項目が変わっているため、自薬局のレセコン設定や算定フローが改定に対応しているか、一度確認しておくことをおすすめします。


まとめ:点数のためだけじゃなく、制度を理解して使いこなす

服薬情報等提供料とトレーシングレポートの関係を整理すると、こうなります。

  1. トレーシングレポートは服薬情報等提供料の「文書による情報提供」に該当する
  2. 医療機関から依頼された場合は1(30点)、薬剤師が主体的に判断した場合は2(20点)で算定
  3. 2026年改定で点数は据え置き。同意対象が「患者又はその家族等」に拡大
  4. 算定には患者(家族等)の同意と文書提供が必須。月1回の上限に注意
  5. 医療機関側は、送られてきたレポートが医師に届く体制を整えることが重要

ぼくがトレーシングレポートを書き始めたのは、点数のためではなく「この情報を先生に伝えたい」という気持ちからでした。その積み重ねが、あとから制度として評価されるようになった。そういう順番だったんです。

大事なのは、制度をちゃんと理解した上で使いこなすこと。「なんとなく書いてなんとなく算定している」では、本来とれるはずの点数を取りこぼしているかもしれないし、誤算定のリスクもある。

今日の記事を読んで、自薬局の算定フローに問題がないか、一度レセコンの設定を確認してみてください。


【書き方編】トレーシングレポートはこう書く〜医師に「伝わる」提案をするための3ステップ〜

【文例集】トレーシングレポート 実例と文例集〜そのまま使えるシナリオ別テンプレート〜

【返事が来ない問題】トレーシングレポートに返事が来ない理由と、それでも書き続けるべき理由

【医師の本音】トレーシングレポート、ぶっちゃけ医師はどう思っているの?


※本記事は2026年6月1日施行の改定内容に基づき作成しています。最終的な算定要件・施設基準の詳細は、厚生労働省の告示・通知・疑義解釈で必ずご確認ください。