「この子、うちの園では難しいかもしれません」

見学に行った保育園の園長先生から、そう言われた日のことを今でも覚えています。

長女に愛護手帳(療育手帳)が交付されたのは、すでに保育園に通っているときのことでした。「転園も考えた方がいいのかな」と妻と話し合ったのをよく覚えています。今の保育園で長女は楽しく過ごしているし、先生たちも一生懸命かかわってくれている。でも、もっと手厚い環境があるんじゃないか、という迷いが正直ありました。

薬剤師として15年以上働いてきて、医療や福祉の周辺知識には多少自信があったつもりです。でも、いざ「わが子のこと」となると、何から手をつければいいかまったくわからなかったです。

結果として転園はせず、今の保育園で長女は十分楽しんでいます。ただ、その選択に至るまでにいろんな園を見学して、いろんなことを学びました。この記事では、障がいのあるわが子の保育園選びで本当に大切なポイントを、ぼく自身の経験と失敗を交えながら正直にお伝えします。


まず知っておきたい「加配」という制度のこと

保育園選びを始めて最初に覚えてほしい言葉が、「加配(かはい)」です。

愛護手帳(療育手帳)を持っているお子さんには、保育園で「加配保育士」をつけてもらえる制度があります。簡単に言うと、集団保育の中で、そのお子さんを個別にサポートするための保育士を追加配置してもらえる仕組みのことです。

加配の内容は園によって大きく違います。

  • そのお子さんだけをマンツーマンで見てくれるケース
  • 3〜4人の子どもを1人の加配保育士が見るケース
  • 「加配はつけているけど、実態はほとんど一般保育と変わらない」ケース

この差は、入園してみるまではわかりにくいんです。だからこそ、見学時や相談時に具体的な質問をすることがとても大切になります。

「加配の先生は、うちの子に対してどのくらいの時間、専属でついてくれますか?」

この一言を聞けるかどうかが、保育園選びの分かれ道のひとつだとぼくは思っています。

あなたのお子さんには、今どんなサポートが必要ですか?まずそこを整理してから見学に臨むと、聞きたいことがぐっと明確になりますよ。


「加配をつける気があるか」を見極める方法

正直に言います。加配に積極的でない保育園は、存在します。

冒頭で書いた「難しいかもしれない」という一言は、その保育園のSOSだったんだと後から気づきました。人員的に余裕がなかったのか、経験がなかったのかはわかりません。でも、あの一言を聞いた時点で、「ここは違う」と感じたのは正しい判断だったと思っています。

見学のとき、ぼくが実際に見ていたポイントをいくつか挙げます。

園長先生の話し方を観察する

加配について質問したとき、「難しい」「前例がない」「うちには対応できない」と即答する園は要注意です。一方で、「一度検討させてください」「どんなサポートが必要か教えてもらえますか?」と前向きに返してくれる園は、姿勢として信頼できます。

言葉だけでなく、「表情」と「間」も大事にしてください。質問した瞬間に困り顔になったり、話をそらそうとする雰囲気を感じたら、それはひとつのサインです。

現場の保育士さんの動きを見る

見学中、実際の保育の様子を必ず見させてもらいましょう。すでに支援が必要な子どもが在籍している場合、その子へのかかわり方がそのまま「うちの子へのかかわり方」になります。

丁寧に声をかけているか。子どものペースに合わせているか。そういった細かいところが、実は一番のリアルな情報なんです。


【最重要】「幼稚園タイプの保育園」は避けるべき理由

ここが、ぼくが一番伝えたいポイントです。

保育園には、大きく分けると「保育所タイプ」と「幼稚園タイプ(教育重視型)」があります。近年は「認定こども園」として両者が融合したかたちも増えていますが、実態としての”色”はどちらかに寄っていることが多いです。

障がいのあるお子さんに幼稚園タイプの保育園が不向きな理由、わかりますか?

答えは、「集団行動の強制力が高いから」です。

幼稚園タイプの園では、こんな活動が多い傾向があります。

  • お遊戯(みんなで同じ動きをする)
  • 課題制作(時間内に全員が同じものをつくる)
  • 集会・歌の時間(全員が同じ場所に座って参加する)

こういった活動は、定型発達のお子さんには問題なくこなせることが多いですが、発達特性のあるお子さんには大きなストレスになりやすいんです。

「みんなと同じことができない」という体験が積み重なると、自己肯定感が削られていきます。それを避けるために、子どもの行動の自由度が高い保育所タイプの園を選ぶことが、実はもっとも重要な視点だとぼくは思っています。

「自由度が高い」とはどういうことか

具体的には、こんな園の特徴を確認してみてください。

  • 自由遊びの時間が長く確保されている
  • 「全員一緒に」が少なく、個々のペースを尊重している
  • 活動への参加を強制せず、見ているだけでも大丈夫
  • 園庭遊びの時間が長く、体を動かして発散できる環境がある

「うちの園では、活動に参加できなくても無理に促すことはしていません」という一言が聞けた園は、ぼくにとって一気に信頼度が上がりました。

長女が今の保育園を気に入っている理由のひとつも、きっとここにあると思っています。先生たちが「この子のペース」を尊重してくれているから、楽しく通えているんじゃないかな、と。


見学で必ず確認したい5つの質問

失敗から学んだぼくが、実際に使ってよかった質問をまとめます。

見学前にこれをメモして持って行くだけで、かなり情報収集の質が変わります。ぜひ参考にしてみてください。

  1. 「愛護手帳がある場合、加配の対応はされていますか?」
    → まず加配の実績があるかを確認
  2. 「加配は何対何の体制ですか?マンツーマン対応は可能ですか?」
    → サポートの具体性を確認
  3. 「集団活動への参加が難しい場面では、どのように対応されますか?」
    → 強制させないかどうかを確認
  4. 「現在、支援が必要なお子さんは何名在籍されていますか?」
    → 経験値と受け入れ実績の確認
  5. 「保護者との情報共有はどのようにされていますか?」
    → 連携姿勢の確認

これだけ聞くと「しつこいかな」と思いますか?思わなくて大丈夫です。むしろ、こちらが真剣であることが伝わるほど、園側の本音が出やすくなります。

ちなみにぼくは、40歳を超えてから医療経営コンサルタントへの転職活動で115社に応募した経験があります笑。全エージェントに「難しい」と言われながらも最終的に1社内定をもらえたのは、諦めずに情報収集し続けたからだと今でも思っています。保育園探しも同じで、数を当たることを恐れないでほしいです。


まとめ:わが子に合った保育園を見つけるために

障がいのあるお子さんの保育園選びで、ぼくが一番大切だと感じたことをまとめます。

  • 愛護手帳があれば、加配を申請できる。まずこれを知っておく
  • 加配の内容は園によって大きく異なる。マンツーマン対応が可能かどうかを具体的に確認する
  • 見学時の園長や保育士の態度・言葉が、その園の姿勢そのもの
  • 幼稚園タイプ(教育重視・集団行動が多い)の園は不向きなことが多い
  • 自由遊びが多く、個々のペースを尊重してくれる保育所タイプを優先する

「転園した方がいいのかな」と悩んだあの頃のぼくに、この記事を読ませてあげたいと思っています。長女は今日も楽しそうに保育園に通っています。それだけで十分だし、それが全てだと思っています。

座右の銘は「刺激があるから人生は愉しい」なんですが、子育てもまさにそうで、壁があるからこそ見えてくるものがある、と今は思っています。

まずは1園、見学の予約を入れるところから始めてみてください。


この記事が、迷っているパパ・ママの一歩を後押しできたら、それ以上に嬉しいことはないです。