ある夜、仕事から帰宅すると、妻の目が少し赤くなっていました。

「今日、保育園でね…〇〇のことで先生に呼び止められて」

延長保育のお迎えのとき、先生からそっと声をかけられたそうです。「集団行動がなかなか難しくて、みんなと一緒に動けないことが多くて…」。その言葉を聞いた瞬間、妻は思わず涙が出てしまったと話してくれました。

ぼくはその話を聞きながら、不思議と「やっぱりそうか」という気持ちが先に来たのを覚えています。

当時、長女は2歳半。活発というレベルを超えた動き回り方、集中力のなさ、そして——2歳半になっても、まだ一言も言葉が出ていませんでした。頭のどこかで、うっすらと覚悟のようなものができていたのかもしれません。

ただ、それも今だから冷静に振り返れる話で、当時は長男(4歳)の育児もまだまだ手がかかる時期。毎日がバタバタで余裕なんてまったくなかった。なぜあのときすんなり受け入れられたのか、正直、今でも自分でも謎なんです 笑

でも結果として、「受け入れる」という選択が、子どもにとって最善の入口になったと、今は確信しています。


「うちの子に限って」——その気持ち、すごくわかります

保育園や幼稚園の先生から「発達が気になります」と言われたとき、多くのパパ・ママが最初に感じるのは「受け入れられない」という感覚ではないでしょうか。

これは弱さでも、無責任でもありません。親として当然の反応だと思っています。

「先生との相性が悪いだけ」「個性の範囲内だろう」「環境が変わればきっと…」——そういう言葉で現実から距離を置きたくなる気持ち、よくわかります。

あなたも今、似たような状況にいるでしょうか?

先生から言われた言葉が頭から離れない。でも、認めてしまったら何かが変わってしまう気がして怖い。そういう気持ちは、決して恥ずかしいことではありません。

ただ、ひとつだけ伝えさせてください。

「先延ばし」がいちばんもったいない、ということです。


「認める」ことと、あきらめることは、まったく別の話

ここをちゃんと分けて考えてほしいと思っています。

「発達が遅い」「発達に特性がある」と認めることは、「この子の未来をあきらめる」ことではありません。まったく別の話です。

薬剤師として15年以上、患者さんと向き合ってきた中で、「病気を認めた人」と「認めない人」の違いをいやというほど見てきました。

糖尿病でも高血圧でも、早期に「自分はこういう状態だ」と受け入れた方は、きちんと治療に向き合えます。逆に、なかなか認められない方は、状態が悪化してから慌てることになる。

子どもの発達も、同じ構造だと思っています。

早く気づいて、早く専門家に相談して、早く適切なサポートを受ける。それが、その子の可能性を最大限に引き出す道です。

認めることは、スタート地点に立つこと。あきらめることとは、真逆の行動なんです。


早期支援には、本当に意味があります

少し専門的な話をさせてください。

脳には「可塑性」があります。簡単に言うと、子どもの脳はまだ柔軟で、適切な刺激やサポートによって発達が促される可能性が高い、ということです。

特に6歳ごろまでの時期は、この可塑性が非常に高いと言われています。

だから「早期発見・早期支援」という考え方が、発達支援の世界では基本になっています。

保育園や幼稚園の先生が「気になる」と言ってくれたのは、ギフトだと思ってほしいんです。

先生たちは毎日何十人もの子どもを見ています。その中で「この子、少し様子が違うかも」と感じて、勇気を持って親に伝えてくれる。それは批判でも烙印でもなく、一緒に支えようとしてくれているサインです。

あなたのお子さんを気にかけてくれている人が、すでにそこにいます。その声を、ぜひ受け取ってほしいと思っています。


受け入れた後、何をすればいいのか

「じゃあ認めようと思う。でも、何をすればいいの?」

そう思っているパパ・ママに向けて、実際に歩んだステップを共有します。

ステップ1:まず、かかりつけの小児科に相談する

「発達外来」や「発達支援センター」というワードが出てくると、ハードルが高く感じるかもしれません。でも最初の一歩は、いつも連れて行っている小児科医への相談で大丈夫です。

「保育園からこういうことを言われた」と正直に話すだけでいい。そこから紹介状を書いてもらえることも多いです。

ステップ2:地域の発達支援センターに連絡する

各市区町村には「児童発達支援センター」や「子ども発達センター」といった相談窓口があります。無料で相談できるところがほとんどです。

「うちの子、診断が出るかどうかわからないんですが…」という状態でも大丈夫。相談を受け付けてもらえます。

ステップ3:診断にこだわりすぎない

これは大事なポイントだと思っています。

「診断が出る=障害がある」という図式で考えてしまうと、診断を避けたくなります。でも、支援を受けるために診断が必須なわけではない場合も多い。

大切なのは「この子に何が合っていて、どんなサポートが効果的か」を知ること。そのために専門家の力を借りる、というスタンスで動くと少し楽になります。

ステップ4:パパ・ママ自身のメンタルも整える

これ、軽視されがちですが本当に大事です。

子どものことが心配で自分が追い詰められていると、子どもへの接し方もぎこちなくなります。支援機関に相談する中で、親向けの相談窓口やグループも紹介してもらえることがあります。「自分のために」相談するのも、立派な育児の一部です。


「難しい」と言われ続けた転職と、受け入れることの力

少し、ぼく自身の話をさせてください。

40歳を超えて、薬剤師から病院経営コンサルタントへの転職を目指したとき、関わったエージェント全員から「難しいですね」と言われました。115社に応募して、内定は1社だけでした。

最初は現実をなかなか受け入れられませんでした。「薬剤師の経験は活かせるはず」「自分には伝える力がある」と思い込んで、うまくいかない原因を外に求めていた時期があります。

でも、ある時点で腹をくくりました。

「ぼくには経営の実務経験がない。それは事実だ」と認めた。

そこから戦略が変わりました。不足している部分を補うための勉強をして、自分の強みを別の角度から伝えることを考えた。認めることで、初めて動けるようになったんです。

子どもの発達に向き合うことも、似ていると思っています。

「うちの子に発達の特性があるかもしれない」と認めた瞬間、親は動けます。情報を集められる。専門家に相談できる。子どもに合ったサポートを探せる。

座右の銘は「刺激があるから人生は愉しい」です。

認めることは、刺激です。現実と向き合うことで、人生は動き始めます。


まとめ:「認める」という選択は、子どもへの最大の愛情表現

保育園・幼稚園から「発達が遅い」「少し気になる」と言われたとき、それを受け入れることは、本当に怖いことです。

でも、ここまで読んでくださったあなたにはわかってもらえると思います。

認めることはあきらめることじゃない。認めることは、スタートに立つことです。

早く専門家に繋がれば繋がるほど、その子が受けられるサポートは手厚くなります。その子の可能性を最大限に引き出すチャンスが広がります。

今日、一歩踏み出してみてください。かかりつけの小児科に電話するだけでいい。それだけで、子どもの未来は動き始めます。


最後まで読んでいただきありがとうございます。この記事が、悩んでいるパパ・ママの背中を少しでも押せたなら嬉しいです。