新型コロナウイルスによる感染症が日本で拡大して早くも半年ほどが経過しましたね.
ぼくの本業は薬局薬剤師です.
とあるドラッグストアに勤務しているんですが, まぁこの半年間,
マスクは売り切れるわ,
消毒液はなくなるわ,
おまけにトイレットペーパーやティッシュは無くなるわ,
ここ最近はイソジンうがい液も無くなるわ…
ほんと, メディアに振り回されてばっかりです.
まだまだ物流が完全回復するまでしばらく時間はかかるかと思います.
こればっかりは供給が需要に追いついていないので致し方ないでしょう.
さて,世間では「with コロナでの◯◯」などと言われておりますね.
新型コロナウイルスとどう折り合いを付けながら自分たちは生活してゆくのか,
正解のない世界をどう生きてゆくのか知恵を絞る必要があるかとぼくも思います.
そんな状況で,ぼくの普段いる「薬局・ドラッグストア」
特に「保険調剤」を行っている薬剤師のちょっとした近況をお伝えします.
オンライン診療解禁によるFAX処方箋受付
新型コロナウイルス感染拡大によって,そもそも病院にいくことをためらう患者さんご家族さんもいらっしゃることでしょう.
ただ,高血圧とか,コレステロールとか,血糖とか,いわゆる慢性疾患・生活習慣病の治療を継続しなければならないひとや,
脳卒中や心筋梗塞といった,いわゆる「怖い病気」を経験したひとが,再発を予防するための治療を継続しなければならないひともいらっしゃいます.
他にも自己免疫疾患患者さんなど,つまり,
「薬を定期的に飲まないといけない」ひとはどうすれば良いのでしょう.
そんな中で,医師に対面で診察を受けなくても,電話やインターネットを介して医師と「面談」して,体調の変化の有無を確認した上で処方箋を発行・普段利用する薬局に送信される取り組みが2020年3月あたりから稼動し始めております.
実際に病院に行かなくても処方箋を発行・薬を受け取ることができる / 自分たちが病院で感染する危険を回避できるということで,全国的にも利用している病院・薬局は増えて来ているのではないでしょうか.
ただ,ここに一つ落とし穴と言うか,面倒なことがありまして…
院内処方から院外処方への方針転換でてんやわんや
普段からぼくの薬局を利用してくださる患者さんなら話は早いんですが,
問題…というか大変なのは新規の患者さんです.
特に,普段は院内処方(病院の中の薬局で直接薬をもらっている)なのに,
今回のコロナのため院外処方に切り替わった患者さん.
患者さんにとってはいつもの薬,になるんですが,
薬局からすれば新規患者さん,それも連絡先やご住所,並存疾患・併用薬や生活歴など,当人に関わる情報が全くない状態で薬を準備せにゃならんのは意外と大変なんですよね…一般の方々にはピンとこないかもしれませんが…
特に困るのは今までぼくの薬局で一回も使用実績のない薬が処方されている場合です.
もしくは久しぶりすぎで既に期限が切れてしまって在庫ゼロな場合も.
こうなったらさぁ大変.
急いで医薬品卸売業者さんに連絡して,うまく午前中の定期発注に間に合えばなんとか当日中には薬は用意できるんですが,一定時間をすぎてしまったり,夕方の時刻ではもうアウト.
明日まで待って再度来局してもらうか,もしくは初めから宅急便などで郵送しなければなりません.
そもそも来局するのか郵送を希望されるのか,その確認すらできない(連絡先を知らない)ので非常にもどかしい.病院に問い合わせても,
「患者の個人情報なのでダメです」
なんて言われることもありますね.涙
こうなってはもう患者さんから薬局に直接電話が来るまで待つしかありません.
最悪,他の薬局に薬を必要分だけ分譲してもらうこともできると言えばできるんですが,
如何せん,高価な薬剤ではなかなかの出費でして…薬局のレジのお金がすっからかんになってまでの準備は無理です…ここは申し訳ない…
そして何より,こういった処方箋のやりとり・連携を,
ひとりひとり電話やFAXで
やらにゃならんのが非常に煩雑で面倒なんです.
もう朝から晩まで電話もFAXも鳴りっぱなし.
いくらマスクを着用していても喋りすぎかつ冷房で喉が痛くなります.涙
まぁITに詳しい薬局さんや病院さんではこの辺りを全部インターネットで済ませているところもあるやもしれませんが…ぼくの勤務するドラッグストアではまだまだ検討中に留まっていますね…はよ対応しておくれ…
こう言う時に,院内処方の脆弱さと言うか,弱点が露骨に現れてくるとぼくは思います.
普段はもしかしたら便利かもしれません.病院で全てが完結しているんですから.
ただ,鋭いひとはお気づきの通り,
実は病院に行くこと自体がある種の危険を伴うものなんです.
特に感染症という,目に見えないウイルスや細菌が蔓延している場合は尚更です.
危険を冒してまで,いちいち病院に行かないと薬をもらえないことの面倒さに辟易してしまう患者さんもいらっしゃるのではないでしょうか.
こういう時には,多少は面倒でも,普段から院外処方で,自宅近くの薬局をかかりつけとして選んでいただいていた方が患者さんにとってはメリットがデメリットを上回るんじゃないかとぼくは思います.思いっきり薬局薬剤師寄りの意見ですが.
まぁ,コロナに関係なく,普段からウイルスや細菌なんてどこでも蔓延しうるんですけれどね.それこそあなたの手にも.
みなさんちゃんと手洗いうがいを継続しましょーねー.
やることはだた一つ,患者の医療安全の確保
とはいえ,いろいろ無いものをねだって隣の芝の青さに嫉妬したり,
現状の不満を垂れ流すだけじゃ状況は何も好転しません.
ぼくら医療者のやることはたった一つ
患者さんの医療安全の確保です.
薬剤師なら安全な薬物療法の確保確立です.
どんな状況でも患者さんを見捨てずに,安全に薬を提供する.
安全に薬物療法を提供する.
薬剤師法第一条の文面の通りです.
[ 薬剤師の任務 ]
第1条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。
そんな心構えで,
今日も毎日患者さんと病院に向き合ってますね.
カッコつけ.
でも,本心です.
さぁ,明日も頑張ろう.
ぼくの薬局に来てくださる患者さんのために.
ただ最後にもうひと事だけ.
リフィル処方箋,はよ!
注:
リフィル処方箋とは,一定の期間内であれば反復使用できる処方箋のことです.
薬が必要なときに薬局でリフィル処方箋を提出すれば,医師の診察を受けなくても薬をもらうことが可能です.
日本ではまだ導入されていませんが,アメリカやカナダ,イギリス,フランス,オーストラリアではすでに導入されております.