医療のこと

トレーシングレポートの書きかた〜事実や現状と問題点を先に書いてから提案せよ〜

今日の要点まとめ

服薬情報提供書(トレーシングレポート)は
まず “事実” を簡潔に伝えよ!
そのあとで,薬剤師としての「問題点」と「診たて」を書いて
「処方提案」をしよう!

週末には時折,というか結構な頻度で同県にいる実母に育児を助けてもらっています.

1歳3ヶ月ちょっとの息子(2020年8月現在)

すでに生後10ヶ月くらいから一人で歩けるようになって,

毎日イタズラの程度や頻度がグレードアップしてパパもママも四苦八苦というか,
振り回されてばかります.

こういう時に,親の存在は非常に有難い.
親になって初めて自分の親の有り難みを痛感します.

いつか息子が大きくなって,結婚して,
自分にも孫ができたときには,

同じように息子の育児(= 孫の世話)を喜んで率先して手伝おうと思う今日この頃です.

さて,前置きはこれくらいにして.

今日も主に薬剤師向けの記事を書き散らします.

トレーシングレポートを書く前に:重要度と緊急度

トレーシングレポートを書くべきなのか,それとも疑義照会したほうが良いのか?
どちらが妥当な判断なのか悩むこともあるかと思います.

このときに大事なのが「重要度」「緊急性」という視点です.

結論から言うと,「重要度」が高いけれど「緊急性」はそこまででもない → トレーシングレポート です.

今すぐに行動することもないけれど,これは処方元も知っておいた方が良い,
というような案件があればレポートを書いて送るのです.

例えば,

・体調が安定しているし検査の結果もずっと良好.できれば薬を減らしたいけれど,医師には直接は言いにくいと患者が言っている場合

・なんとか薬は飲めているけれど,用法が煩雑で,なんとか一回にまとめられないかと患者から相談された場合

・現状,特に患者は困っていないけれど,薬の飲み合わせによる有害事象が起こるリスクが高い状態が維持されてしまっている

・疑義照会の電話ではなかなか現状を伝えづらいため,きちんと文章を書いたほうが相手に伝わる.証拠としても保持できる

などです.

ちなみに,重要度の高低に関わらず緊急性のある(= すぐにその場で行動しなければならない)場合はすぐに疑義照会ですね.

まとめると以下の表になります↓

重要重要でない
緊急性あり疑義照会
緊急性なしトレーシングレポートスルー(笑)

 

この 重要度 × 緊急性 と言う,2 x 2 の表で考える習慣は薬剤師も身につけたほうが良いでしょう.

トレーシングレポートの書き方①:事実を淡々と簡潔に述べる!

さて,トレーシングレポートとなるような案件が発生したとして,まずはどうやって書き始めましょうか.

ポイントその①は「事実を淡々と述べる」ことです.

薬剤師として処方元に色々と確認したいこと・言いたいことは多々あるかと思います.

ただ,いきなり前置きもなく意見を先に書くことはおススメできません.

なぜなら,事実に基づいているのかが相手には伝わりにくいからです.

よって,書き始めは兎にも角にも事実から.これは鉄則だと肝に銘じてください.

ちなみに,患者の気持ちや希望,もしくは不満も,これは感情ではあるものの患者がそう感じていること自体は紛れもない事実なので,そう言う場合も真っ先に書いておくと良いです.

そして事実を述べるのもできる限り簡潔に書くことです.短い文章で,重複表現や変に凝った書き方になっていないかも十分に注意しましょう.

トレーシングレポートを送る相手は間違いなく多忙なのです.短い時間でもサクッと読めて,現状を把握できるよう心血を注ぐのです.

トレーシングレポートの書き方②:事実から何が問題(懸念)なのかを明記する!

事実を述べたとして,次はその事実がどう問題なのか,もしくは問題になり得るようなリスクがどれくらいあるのか,その評価(アセスメント)をします.「薬剤師としての診たて」,と表現してもよいでしょう.

例:

・どうしても飲み忘れがあって残薬調整を毎回行っている(事実)→ 治療がうまくいかないリスクがある(問題)

・用法が煩雑だと患者が感じている(事実) → いずれは自己判断で服薬を中止休止しかねない(懸念)

ここでも大事なのは,あれこれグダグダと書き散らさないこと.思うところがたくさんあっても,なるべく的を絞って言葉もまとめることです.

トレーシングレポートの書き方③:①と②に基づいて処方提案せよ!

事実とそれに対する評価がきちんとできて初めて(処方)提案を行います.

ここで大事なのは「具体性」です.処方元に何をどうして欲しいのか,明確にイメージできるくらい言葉を補って提案するのです.ただし,何度も言うようにグダグダと冗長な文章は御法度です.

このときに,できれば医学論文やガイドラインなど,ある科学的な根拠も併記して,提案の基となる考え方やデータも併記しておくことをおススメします.適当なことを言っているのではないと相手に思ってもらえるようにしましょう.

ただし,あまり根拠を前面に押し出しすぎるとエビデンスを武器に相手を否定しているかのような文章になってします.そうではなくて,あくまで自分の論旨を補うもの,くらいにしておきましょう.

例:

❌ こんな論文があるからこれが正しいやり方です.

⭕️ こんな論文があるから,こういうやり方も選択肢の一つとして挙げられると愚考しております.

みたいな.

おまけ:よく使う文言集

・平素お世話になります(挨拶)

・〜と愚考しております(評価)

・不躾な申し出を大変失礼いたします(提案)

・引き続きご高診のほど何卒よろしくお願い致します(結びの言葉)

特に最後の「引き続きご高診のほど何卒よろしくお願い致します」は医師同士の紹介状でも使われる文言です.ぼくら薬剤師も積極的に活用しましょう.

 

今日書いた内容はトレーシングレポートの基本のキです.

もちろん細かなところで例外もあるとは思いますが,

重要度や緊急性を判断し
事実をきちんと評価した上で提案する

この構えはどんな事例でも通用するやり方かと愚考しております.

 

今日はここまで.
それでは▽