医療のこと

薬局で救急車を呼ぶときのポイント5点

今回は薬局・薬店薬剤師向けの記事です.

「薬局で救急車?!そんなんあるわけないやんwww」

と思ったそこのあなた,はい,勉強不足です.
薬局・薬店でも救急車を呼ぶ事例は年に100例ほどあります(大阪市の事例です↓).

薬局・薬店における救急車要請事例に関する検討
日本臨床救急医学会雑誌 2019 年 22 巻 1 号 p. 6-13

ポイント1:見極める

何はともあれ,救急車を呼ぶべきかどうかの見極めが大事です.

もちろん,いきなり吐血したとか,帰り際にドアの前で倒れたとか,そういう明らかに緊急性の高い事例は当たり前の事例として除外します.そういう時は即座に気道,呼吸,循環,意識レベルの確認と心肺蘇生法を実施すべきです.このあたりは今回は深く言及せずに各種成書を参照してください.

ここでは「どうしよう,救急車呼んだほうがいいかな…?」と迷った場合についての判断方法について,あくまで ぼくの考え を述べます.

それはずばり,「直感」です.

んなアホなと思われたかもしれません.何か根拠はないんかい?と思われるかもしれません.

確かに,「救急車を呼ぶべきとき」などとググれば,例えば政府広報オンラインにもその判断基準が掲載されています.

ただし,そう言ったページを見ればおわかりの通り,先に述べた「明らかに様子がおかしい」と素人でもわかるような場合が多いです.こういう時は判断はそこまで難しくなく,むしろ救急車が到着するまでの間に患者の評価と対処(心肺蘇生,AEDの使用など)を適切に行うことに重点が置かれるでしょう.

薬局で救急車を呼ぼうと思う判断の根拠は薬剤師であるあなたの直感です.もう少し言葉を補うと,

このまま患者さん・お客さんを帰宅させちゃまずい / 自力で帰宅できないだろう
今はかろうじて大丈夫かもしれないけれど,容体が急変するんじゃないか?

と感じた時です.

こういう場合は迷わず行動しましょう.迷っている時間がもったいないです.
例え結果として杞憂に終わっても良いです.
恐れずオーバートリアージ気味でいきましょう.

ポイント2:患者の状態評価・把握

さて,救急車を呼ぶべきだと判断したら,同時並行で目の前の患者さん(お客さん)の状態をアセスメントしましょう.

今回は倒れている / 意識がない患者さん・お客さんの場合は省略します.あくまで,普段から来局している患者さん・お客さんが,意識がぼーっとしている,などの状況を想定しております.

意識障害の評価(JCSもしくはGCS,成書参照)
身なりの把握(衣類を正しく着ているのか,手ぶらなのか,怪我や出血はないかなど)
どうやって薬局・薬店に来たのか(徒歩,自転車,自動車,公共交通機関など)

です.

ポイント3:患者の状況説明

救急車を呼ぶ場合,救急隊員さんから必ず,「どんな人・状況ですか?」と聞かれます.その時も,焦らず,的確に状況を説明できるようになりましょう.

ポイント2で評価・把握した内容を手短に説明した上で,可能なら基礎疾患やどんな治療を受けているのかも伝えるとなお良いでしょう.

例:
年齢◯◯の男性(女性)です.JCS◯◯,来局来店時から会話が噛み合わず,
外傷や出血はありませんが着衣も乱れており,流涎(よだれ)ありです.
○◯という疾患で現在治療を受けており,当薬局で薬を用意しております.

ポイント4:救急隊員さんに渡すものの準備

救急車が到着するまでの間,患者さんお客さんから目を離さないように気をつけましょう.

同時に,もし必要ならば,患者さんの連絡先や住所,服用薬剤の情報を救急隊の方々に渡せるように用意することをぼくはおすすめします.

患者さんお客さんが免許証やお薬手帳など,身分や治療歴のわかるものを持参していればこの必要はないのですが,
ときには携帯電話だけしか持っていない / 手ぶらで身分を証明するものがないもない,ということもありえます.他のスタッフさんに協力をお願いしましょう.

また,薬局・薬店の名刺など,こちらの連絡先もお渡しすることもおすすめします.結果しとして不要かもしれませんが,後から追加で救急隊 / 消防署から連絡があるかもしれません.

ポイント5:通院している病院へ連絡

無事に救急隊に患者さん・お客さんを預けられたら,今度は定期通院している病院にも一報電話連絡しておくことをおすすめします.

搬送された病院から,いずれ連絡があるかとは思いますが,ここは先んじて,薬局でこういうことがあったあら救急車を呼びました,と事後報告しておきましょう.

例えオーバートリアージで何事もなかったとしても,患者さんに関わることですから通院先の病院から文句は言われないとぼくは思います.

おまけ(どうでもいい話)

ぼくのいる薬局ではこれまでに何度か救急車を呼んだことがあります.
オーバートリアージであったことや,本当に患者さんが搬送されたこともありますが,

上記ポイント5点を意識して行動することで,救急隊のみなさまや通院先の病院との連携がそれなりになんとかうまくできたのかなと自負してます.
まぁ,相手からのフィードバックがないので自惚れているだけかもしれませんが…

 

大事なのは迷わず行動することです.
そして,行動するにもきちんと大事なところを押さえておくことです.

今は書店などで薬剤師向けの救急(もしくは災害時)のテキストも購入できる時代です.

いざという時のために,勉強して,やることを頭に叩き込んで,
できればワークショップなどにも参加して,具体的に行動できるように備えておきましょう.

備えあれば憂いなしですから.

今日はここまで.
それでは▽