医療のこと

情報提供・処方提案が怖くてできないと思ったときに考えること3点

前回はトレーシングレポートの基本的な書き方を紹介しました.

こういう記事を書く,
もしくは,
現実世界で「こうやるんだよ」と他の薬剤師に説明してみると,

そこそこの頻度で,

「そんなことしたら処方医から文句言われるかもしれないし,何かあったら困るじゃん怖くてできないよ」

なんて言われます.

そこのあなたももしかしたらそう感じてしまったのかもしれませんね.

大丈夫,何を隠そうぼくだって,かつては同じような気持ちになって尻込みしていたものです.

今日は,なかなか情報提供や処方提案に踏み出せない薬剤師のために,ちょっとした心構えをお伝えします.

情報提供の心構えその①:文句を言われても患者にデメリットはない

例えば,情報提供をする相手の医師が非常に気難しかったり,たまたま医師の腹の虫の居処が悪かったり,つまり,適切的確なことを述べても理不尽な応答しかされないだろう,なんて予測してしまった場合です.

こういう自体が実際に起きてしまったらやっぱり凹みますよね.笑

せっかく丹精込めて考え抜いた提案をむげに扱われてしまったら,
その理不尽さに怒りと悲しみが沸き起こってもなんらおかしいコトではありません.

ただ,ちょっとまってください.

そもそも,医師から何か文句を言われて,それで困るのは誰でしょう?

患者さんが何か困ったことになるのでしょうか?

というか,患者は1ミリも困りませんよね??

患者さんの健康状態は1ミリも悪化しませんよね???

それならば,何も問題ないとぼくは思います.

非常にシンプルな考え方ですが,

「困るのは誰?自分?それとも患者さん??」
「自分が困るのは別にいいじゃん,患者さんに迷惑がかからなければ」

という視点が抜けている人が意外と多いとぼくは思ってます.
きちんと調査もしていないただの感覚ですが.

繰り返します.

確かにせっかくの提案がむげに扱われる可能性は否定できません.

が,それで困るのが自分だけなら,むしろリスクは低いと判断して思い切って一歩を踏み出してはいかがでしょうか.

情報提供の心構えその②:無理に提案を押し通さない

情報提供・処方提案をやり始めたばかりの,駆け出しの薬剤師に陥りがちな落とし穴ですね.

「なんとしても処方を変更せねば!これが正義だ!!」

みたいな.笑

確かに,薬剤師の診たてではいろいろ突っ込みどころのある薬の使い方があるかもしれません.というか,実際にあります.ありまくりです.

ただ,その処方内容という「結果」だけの一点評価はいけません.

その処方に至った経緯や,医師や患者さん,もしくはそれ以外の医療職,家族,介護職など,患者さんを取り巻く人たちの状況・環境・気持ちや希望と言った物が総合的に配慮されて,今の薬の使い方に「行き着いた」と思ってください.

そういう,時間軸や人間の関係性などの空間的な(心理的空間を含む)にも思いを馳せて,その中で最も妥当な考えが今の処方内容に反映されていると思いましょう.

つまり,

処方内容には医師の考えだけではなく他の要因も少なからず影響しているということです.
それぞれの因子が絶妙に絡み合っている以上,そこにいきなり一介の薬剤師が土足で踏み込んで「こうした方がいい!」と述べても,それがどれだけ妥当な物であっても,なかなかに受け入れられるのは難しいとぼくは思います.

もし本気で提案したいなら,そう言った患者さんの周囲の状況や感情にも配慮した言い方・書き方をした方が得策です.

仮に自分の提案が受け入れられなかったとしても,それはあなたの提案がなのダメではなく,今回はもっと他に優先憂慮すべきコトがあっただけのことです.

できれば,そいういうところも後から聞き出せるように,患者さん,処方医,その他の関係者とコミュニケーションが取れるような間柄・信頼関係(ラポール)を形成しておくと良いでしょう.

情報提供の心構えその③:失敗は最大の学び.ついでに笑いのネタにすればあなたはかけがえのない人財になる

それでもときには失敗する(医師から文句を言われた,提案を受け入れてくれたけれど結果として患者の状態が悪化した)こともあるでしょう.ぼくだって提案したら「ウルセェ!」って言われたり,反対に提案通りに処方変更・減薬されても,患者さんの健康状態がかなり悪化してしまってメチャ凹んだこともあります.それも何度も.笑.

でも,でもですよ.

それって,勇気を出して一歩行動したから起きたことじゃないですか.

医療は不確実なものです.こうすれば絶対に大丈夫,なんて保証なんてありません.
絶対に交通事故を起こさない運転方法がないのと同義です.

いろんなリスクを考慮して,その中で,現時点ではこれがおそらく最も妥当な薬の使い方だろう,と診たてて,それを責任持って提案したんです.それ自体がとても尊いコトじゃないですか.決してそんじょそこらの薬剤師にはできないコトですよ(本当は全ての薬剤師にできて欲しいコトですが).

失敗は最大の学びです.
もちろん同じような失敗を繰り返すのは学んでいない証拠として猛省すべきですが,

うまく行かなかった原因を自己分析する習慣はもちましょう.

失敗したのはぼくの,そしてぼく以外の要因として何があったんだろう.自分の判断や,知らない情報があったのだろうか…と.

そこに遠慮も余計なプライドも捨てた方がいいです.変に「いや俺は間違ってない今回はたまたま運が悪かっただけだ!」なんて開き直るのは御法度です.

本当に余計なプライドなんて持たないに限ります.学びの足かせにしかなりません.学ぶにはまず自分ができない/できなかったという事実を認めて受け入れるだけの余裕が必要です.

それに,もし冒頭のように医師に「ウルセェ!」なんて言われたら,それこそ

「やー医者にめっちゃ文句言われちゃったよーこれ何か笑いのネタにできないかなーwww」

くらいに思っておきましょう.こういう発言だけで周囲が「クスッ」っとしてもらえればそれだけで文字通り笑いを提供できます.笑いは大事です.医療は真剣勝負の場ですが,真剣に向き合うためには休息と娯楽は必要です.あなたがその一助となれば,それこそ現場にとってかけがえのない人財になれるとぼくは思います.

 

以上,情報提供・処方提案に尻込みしたときに考えるポイント3点でした.

今日はここまで.
それでは▽