薬局の新規個別指導の概要と法的根拠

新規に保険薬局を開設された方、または開設予定の方にとって、避けては通れないのが「新規個別指導」です。今回は、この新規個別指導について、その概要から法的根拠、実務上のポイントまで詳しく解説します。

新規個別指導とは

新規個別指導とは、新たに保険薬局の指定を受けた薬局に対して、指定後おおむね6か月から1年以内に行われる、厚生局による教育的な個別指導のことです。その目的は、保険調剤の適正化と法令遵守を早期に定着させることにあります。

新規個別指導の概要

対象となる薬局

新規に保険薬局の指定を受けた薬局が対象となります。これには新規開設だけでなく、遡及指定を受けた薬局も含まれます。

実施時期

保険薬局としての新規指定から、おおむね6か月経過後1年以内に実施されます。ただし、実際の開始時期は多少前後することがあります。

実施主体と場所

地方厚生局が実施主体となり、都道府県単位の厚生局会議室等に薬局側が出向いて受ける形式が一般的です。

実施方法と時間

指導対象となる患者のレセプト(調剤報酬明細書)、処方箋、調剤録等を基に、面接懇談方式(質疑応答形式)で行われます。所要時間は概ね1時間程度です。

指導内容の主なポイント

新規個別指導では、以下のような点が確認されます。

  • 保険調剤の基本的な算定ルールと請求方法の確認
  • 処方箋の取扱い、調剤録・薬歴管理、服薬指導や情報提供の適切性
  • 残薬確認や副作用確認、重複・相互作用のチェック状況などの保険薬剤師業務全般
  • 不適切な算定や記録の不備があれば、その場で是正を促される(教育的指導)

新規個別指導の性格と位置付け

新規個別指導は、行政手続法上の「行政指導」に位置付けられています。監査のような処分前提ではなく、開業初期における運営基盤整備のための教育的・予防的な指導という性格を持っています。

拒否はできるのか

個別指導は、適正な診療(調剤)と報酬請求を担保するために健康保険法・国民健康保険法に基づき義務付けられており、正当な理由なく拒否することはできません。

正当な理由なく新規個別指導を拒否した場合、より厳格な「個別指導」や監査の対象となり得ることが各種解説で示されています。

法的根拠

新規個別指導には、以下の3つの法的根拠があります。

1. 健康保険法

健康保険法第78条(保険医療機関等に対する指導・検査等)において、保険医療機関・保険薬局等に対し、厚生局長等が必要な報告を求め、帳簿書類の提出・閲覧・調査・指導等を行うことができる旨が規定されています。この「指導」の枠組みの中で、新規個別指導・集団指導・個別指導等が具体化されています。

厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関若しくは保険薬局若しくは保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であった者(以下この項において「開設者であった者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関若しくは保険薬局について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2. 国民健康保険法

国民健康保険法第45条の2において、保険医療機関等に対する報告徴収・帳簿書類の検査・指導・監査等の規定が設けられ、健康保険と同様に指導制度の法的根拠が付与されています。

厚生労働大臣又は都道府県知事は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関等若しくは保険医療機関等の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であつた者(以下この項において「開設者であつた者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関等の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であつた者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関等について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

3. 高齢者の医療の確保に関する法律

高齢者の医療の確保に関する法律第72条において、後期高齢者医療に係る診療・調剤について、保険医療機関等に対する報告徴収・指導・監査等が規定され、高齢者医療制度における指導の根拠となっています。

厚生労働大臣又は都道府県知事は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関等若しくは保険医療機関等の開設者若しくは管理者、保険医等その他の従業員であつた者(以下この項において「開設者であつた者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関等の開設者若しくは管理者、保険医等その他の従業者(開設者であつた者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関等について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

実務上のポイント(準備のために押さえておくべきこと)

新規個別指導を受ける薬局としては、次の点を押さえて準備することが重要です。

基本的な記録類の整備

処方箋、調剤録、薬剤服用歴(薬歴)、患者への情報提供記録、疑義照会記録などを、算定内容と整合するよう整理しておきましょう。

請求内容と現場実態の整合性

加算(後発医薬品体制加算、服薬情報等提供料、かかりつけ薬剤師指導料等)ごとに、算定要件と実際の業務が合致しているかを確認しておくことが大切です。

服薬指導・薬学的管理の実施状況

残薬確認、副作用・相互作用のチェック、他科受診・他院処方の把握など、保険薬剤師として求められる継続的な薬学管理が行われているかを説明できるようにしておきましょう。

指摘事項への対応姿勢

教育的指導であるため、指摘事項があった場合は改善策を明確にし、次回以降の集団的個別指導・個別指導の際に改善状況を示せるようにしておくことが重要です。

まとめ

今回は薬局における新規個別指導の概要と注意点について解説しました。新規個別指導は教育的な性格を持つものですが、しっかりと準備をして臨むことが大切です。次回は、より具体的にどう対応すべきか詳細を解説する予定です。