前回の記事では、新規個別指導の概要と「怖くない」理由をお伝えしました。

今回はその続きとして、管理薬剤師として具体的に何を準備すれば良いのかを詳しく解説します。

個別指導で確認されるのは「法令で決められていること」です。 そして担当官が見るのは、薬歴だけではありません。

「管理薬剤師として、法令で決められていることをどのように理解しているか」

ここが問われます。

つまり、管理薬剤師が薬局全体の運営を正しく把握・管理できているかどうかが、指導の大きな軸になるわけです。

準備すべき内容は大きく5つに分けられます。順番に見ていきましょう。


① まず「自薬局のデータ」を即答できるようにする

指導の冒頭では、薬局の基本情報や運営状況をかなり細かく確認されます。 事前に以下のデータを整理して、すらすら答えられる状態にしておきましょう。

人員体制

  • 薬剤師数(常勤・非常勤それぞれ)
  • 事務スタッフ数

活用状況

  • 手帳持参率(%)
  • マイナ保険証の利用率(%)

調剤実績

  • GE率(後発医薬品の調剤割合):直近3か月分を月別に把握
  • 集中率(処方元上位1位・2位・3位の割合)
  • 返戻件数とその主な理由(国保・社保それぞれ)
  • 妥結率:100%になっているか確認

薬局の基本情報

  • 住所・電話番号・開局曜日と時間
  • 名刺を用意しておく(担当官に渡せる状態にしておくと丁寧)

開局時間や曜日の設定理由を聞かれることもあります。 「門前医院に合わせた設定」ではなく、「より多くの地域の方にご利用いただけるよう設定しています」 という言い方が適切です。


② 調剤業務フローを「見ないで説明」できるようにする

「調剤の流れを説明してください」という質問は、ほぼ確実に来ます。

ポイントは、メモを読み上げるのではなく、相手の目を見てゆっくり説明すること。

ある程度暗記して、自分の言葉で話せるようにしておきましょう。

基本的な調剤業務フローは以下の通りです。

処方箋受付
 ↓
患者情報の収集・薬歴確認(★調剤前に薬歴確認がPOINT)
 ↓
処方監査
 ↓
調剤
 ↓
調剤監査
 ↓
服薬指導
 ↓
投薬
 ↓
調剤報酬の算定・会計(★後算定がPOINT)
 ↓
薬剤服用歴の作成・記録・保管
 ↓
調剤録の作成・保管
 ↓
処方箋・調剤録・薬剤服用歴の保存(法令上3年、当社基準では5年保存)
 ↓
調剤報酬請求

ここで特に強調したいのが2点です。

「前確認・後算定」がPOINT。

調剤前に薬歴を確認すること(前確認)、算定は服薬指導後に行うこと(後算定)。この順番を守れていない薬局は、算定要件を満たしていないと判断されることがあります。


③ 算定している加算の要件を「全部言える」ようにする

これが最も重要な準備かもしれません。

加算している加算要件は、必ず言えるようにしておく。

特に多く指摘されるのが「特定薬剤管理指導加算」です。 算定要件を満たしていない薬歴が散見されるため、担当官からの確認が多くなる傾向があります。

特定薬剤管理指導加算1・3はそれぞれ算定要件が異なります。 それぞれの要件と、算定時の薬歴への記載方法を、事前に確認しておきましょう。

また、以下の算定要件についても改めて確認を。

  • 乳児算定要件(体重・投与量・剤形):コメントが毎回同じは不適切。加算算定時のコメントは毎回変えること
  • かかりつけ薬剤師指導料
  • 服薬情報等提供料
  • 後発医薬品体制加算
  • 外来服薬支援料2(どのような人に算定しているか答えられるか)

さらに、以下の確認事項もよく聞かれます。

  • 保険調剤薬局である旨の掲示場所は?(待合室と店舗外壁・入口のドアに患者に見えるよう掲示)
  • 処方箋は誰が受け取るか?(薬剤師)
  • 調剤録はいつ誰が保存するか?(薬歴記載後、薬剤師が電子調剤録を作成)
  • レセプトは誰が送っているか?(事務が作成しても、必ず管理薬剤師が確認して送付)
  • 領収書と明細書はすべての患者に発行しているか?(全員に発行)
  • 外用薬の混合可否は何で確認しているか?(「軟膏・クリーム配合変化ハンドブック」「インタビューフォーム」「メーカー問い合わせ」など)

④ 薬歴の質を点検する〜ここが指導の本丸〜

個別指導で最も深く見られるのが薬歴です。

管理薬剤師として、自薬局の薬歴が正しく記載されているかを事前に点検しておきましょう。

ヒアリング項目の漏れを確認する

ヒアリングで収集すべき情報は以下の通りです。 お問い書きに書かれている項目は基本的にすべてヒアリングに入力するのが原則です。

特に見落としやすい項目を列挙します。

残薬:記入忘れが多い。前回処方日数より早めに来局した場合は余りがあるはず。カレンダー機能を活用して確認・記録する。

お薬手帳:「あり・なし」だけではNG。

  • 手帳ありの場合 → 持参・提示しているか確認、シール貼付、併用薬・飲み合わせを確認
  • 手帳なしの場合 → 次回から持参・提示いただくよう案内
  • 拒否の場合 → 手帳での飲み合わせ確認等の活用意義を説明するが、理解いただけずとも不要とはならない

アレルギー歴:見落としがち。抗ヒスタミン薬・吸入薬・抗ロイコトリエン薬が出ているのにアレルギー歴がなしはおかしい。花粉症・アトピー性皮膚炎なども記入。

副作用歴:あれば必ず入力。赤字で登録すること。

疑義照会の有無:忘れがち。ドンペリドン食後服用、ファモチジン1錠食後服用、ゾルピデム就寝前などの処方は門前との疑義照会済みとして処理されている場合があるが、サマリ転記を忘れずに。

飲食物摂取:グレープフルーツ・納豆などの摂取状況を記載する欄。食事の回数を書く欄ではない。

後発品希望:デフォルトを「あり」にしておくこと。先発品希望の方だけ「先発希望」に変更。

運転の有無:てんかんや抗アレルギー薬を服用している場合は必ず確認する。

SOAP形式の記載を確認する

薬歴はSOAP形式で記載するのが基本です。

S(主観的情報):患者主訴を記載。

O(客観的情報):初回か継続かを記載。ハイリスク加算を算定した場合は「バイアスピリン:ハイリスク1(ロ)算定」のように、どの薬剤に対して何をもって算定したかわかるように記載。

A(アセスメント):SやOに対する薬剤師としての評価・判断を記載。ハイリスク加算を算定した際は、算定の根拠がわかるように書く。

EP(指導内容):添付文書の重要な基本的注意に「指導すること」「説明すること」「注意すること」と書かれている事項はEPへの記載が必要。頓服薬は何時間空けるか、1日何回まで使用可能か、服用タイミングはいつかも記載必要。

OP(次回確認事項):次回投薬時に確認すべきことを記載。ハイリスク加算算定時は特に重要。

漫然処方にはコメントが必要な薬剤を把握しておく

以下の薬剤は、長期・継続処方の場合に薬歴上にコメントが必要です。

薬剤コメントが必要となる期間記載例
タケキャブ・PPI(ランソプラゾール等)8週間を超える場合「維持治療の必要な難治性逆流性食道炎で使用」
モサプリド2週間以上「服用により効果あり、継続服用医師了承済み。症状の悪化防ぐため継続服用必要と判断。」
メコバラミン(ビタミン系)90日以上同上
ラメルテオン2週間以上同上

指摘されやすい薬剤を事前に把握しておく

以下のような処方は、特に確認が入りやすいポイントです。

重要な基本的注意:指導と記載が求められる薬剤

担当官が指摘しやすい薬剤の例として、以下が挙げられます。

  • メトグルコ → 乳酸アシドーシスの指導・記載
  • ピオグリタゾン → 心不全・浮腫の指導・記載
  • エクア → 急性膵炎の指導・記載
  • フォシーガ → ケトアシドーシスの指導・記載
  • ボナロン → 顎骨壊死・外耳道壊死、服用法(起床時に十分量の水で、服用後30分は横にならない等)の指導
  • リクシアナ → 出血の兆候がある際の指導、飲み忘れた際の対処の指導

適用が複数ある場合の疾患名の記載

カルベジロールを例にとると、心不全・狭心症・高血圧症と複数の適応があります。 現病名として何の疾患に対して処方されているのか、細かく記載しておく必要があります。

承認内容と異なる用法・用量への対応

  • アムロジピンの就寝前投与 → 就寝直前ではなく「就寝前」の場合、疑義の有無を確認
  • 抗アレルギー薬の朝夕食後処方 → 朝食後・就寝前での疑義の有無を確認

外用薬の使用部位の確認

塗り薬は聞き取り記録でOKですが、貼り薬は適用部位の兼ね合いで疑義照会が必要になる場合があります。使用部位を詳細に確認し、記録に残すことが重要。


⑤ 電子薬歴の管理状況を確認する

電子薬歴(GooCo等)には、法令上「真正性」「見読性」「保存性」の3要件が求められます。

中でも確認されやすいのがパスワード管理です。

パスワードは英数字・記号を混在させた13文字以上であれば更新不要です。 ただし、8文字以上13文字以下の場合は2か月以内に変更が必要です。 事前に全スタッフのパスワード要件を満たしているか確認しておきましょう。


⑥ 指導当日の立ち振る舞い

内容面の準備と同じくらい大事なのが、当日の対応姿勢です。

「本音」と「建て前」を使い分けることが重要です。担当官の指摘に対して、即座に反論するのはNGです。まず相手の話を受け止め、その上で自分の考えを述べること。

質問には正直に、簡潔に答える。わからないことを「わかりません」と言うのは恥ずかしいことではありません。むしろ、曖昧な回答や口答えの方が印象を悪くします。

最後に「何かご質問はありますか?」と聞かれたときの締め言葉も、事前に準備しておきましょう。

「ご指摘いただきありがとうございます。ご指摘いただいた部分は、薬局スタッフ全員で共有し、直ちに改善いたします。今後、一層適正な保険調剤及び調剤報酬請求に努めてまいります。本日はありがとうございました。」

この一言があるだけで、指導の終わり方が全然違います。


まとめ

新規個別指導で管理薬剤師が準備すべきことをまとめます。

  1. 自薬局のデータを即答できる(GE率・集中率・返戻件数・手帳持参率など)
  2. 調剤業務フローを言葉で説明できる(メモを見ずに、相手の目を見て)
  3. 算定している加算要件を全部言える(特に特定薬剤管理指導加算)
  4. 薬歴の質を事前に点検する(ヒアリング漏れ・SOAP記載・指摘されやすい薬剤)
  5. 電子薬歴のパスワード要件を確認しておく
  6. 当日の立ち振る舞いを準備しておく(締め言葉まで)

指導は「やっていることを正しく伝える場」です。 日常業務がきちんと行われていれば、あとは伝え方の準備をするだけ。

怖がらず、でもしっかり準備して臨んでください。


※本記事の情報は2026年時点のものです。制度の詳細や算定要件は改定されることがありますので、最新情報は地方厚生局または各種告示・通知をご確認ください。